社長メッセージ

カーボンニュートラルの未来を築く
事業構造変革と人財育成の挑戦

代表取締役社長 社長執行役員(兼)CEO  木藤 俊一
代表取締役社長 社長執行役員(兼)CEO  木藤 俊一
代表取締役社長 社長執行役員(兼)CEO  木藤 俊一

代表取締役社長
社長執行役員(兼)CEO
木藤 俊一
2023年11月

事業構造改革への取り組み ~共創・協業を通じてカーボンニュートラルを推進します~

当社グループは、2050年ビジョン「変革をカタチに」を掲げ、カーボンニュートラル・循環型社会の実現に向けて、大きく事業構造を変革すべく、2023年度を起点とする中期経営計画を2022年11月に公表しました。

私は、この中期経営計画を、単なる3ケ年の収支計画ではなく、化石燃料依存を脱し、新たなエネルギーと素材におけるメインプレーヤーとなる試金石としての「実行計画」と位置付けており、当社の将来を左右する重要な分岐点と考えています。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を機に、各国のエネルギー政策が脱炭素一辺倒からトランジションを意識した、より現実的な議論へとシフトする中、エネルギーと素材の安定供給の責務を果たしながら、カーボンニュートラルに向けた社会実装を着実に推進していく当社の目指す姿が変わることはありません。

エネルギー政策の判断軸である、経済効率性、エネルギーセキュリティ、環境適合性、安全性といった「3E+S」を同時に満たす、将来のエネルギー・素材を見極め、そこに到達するまでの時間軸を見誤ることなく、取り組んでいきます。

5つの既存事業から3つの事業領域(「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」)への事業ポートフォリオ転換に向けた最近の取り組みをご紹介します。

当社千葉事業所に、使用済みプラスチックを原料とした2万tの油化ケミカルリサイクル設備の建設を決定しました。現状、我が国において820万tの使用済みプラスチックの再生品への利用は約2割にとどまっています。本設備を通じて使用済みプラスチックを原料である石油に戻し、文字通りリサイクルチェーンを確立します。この取り組みは、製油所・事業所がカーボンニュートラルの社会インフラとなる一例だと考えており、2025年の商業運転開始に向け、様々な検証を経て規模拡大を図っていきます。

次に、現在主流の液体型リチウムイオン電池の性能を超えると期待される、全固体電池向け固体電解質の開発です。約30年にわたって培ってきた当社の製造技術などを生かし、固体電解質の実用化・量産化を進めています。

EV用全固体電池の量産実現に向けた協業も行いながら、カーボンニュートラル社会に資するEV化へのトランジションに向け、より良い材料を世の中へ広くお届けすべく、更なる技術開発に取り組んでいます。

中期経営計画 2023~2023年度 責任ある変革者 2030年ビジョン 変革をカタチに 2050年ビジョン
中期経営計画 2023~2023年度 責任ある変革者 2030年ビジョン 変革をカタチに 2050年ビジョン
中期経営計画 2023~2023年度 責任ある変革者 2030年ビジョン 変革をカタチに 2050年ビジョン
事業ポートフォリオ
事業ポートフォリオ
事業ポートフォリオ
  • CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)

  • ICT(Information and Communication Technology)

代表取締役社長 社長執行役員(兼)CEO  木藤 俊一

今回二つの事例を取り上げてお話ししましたが、すでにお伝えした通り、持続可能な航空燃料(SAF)、ブルーアンモニア、二酸化炭素(CO2)の回収・利用・貯留(CCUS)設備、合成燃料など、早期の社会実装を目指し様々な検討を始めておりますので、適宜発信してまいります。

これらの取り組みを通じてあらためて、カーボンニュートラル社会の実現に向けた事業構造改革は当社単体では担えないということを実感しました。エネルギー業界各社との協業に限らず、業界の垣根を超えたグローバルな企業との連携、さらにはアカデミアとの共同研究なども不可欠です。多様なステークホルダーとの共創・協業に当たって中心的役割を果たすのが当社の従業員であり、そのためにも更なる人的資本の充実が鍵となります。

人的資本の価値向上への取り組み ~挑戦する人財を育成します~

次に、「事業構造改革投資」と両輪にて取り組む「人財戦略(人的資本投資)」についてお話しします。

20世紀を振り返ると、人類は化石燃料というエネルギー密度が高く、安価で便利なエネルギーに出会い、産業発展の礎としてその恩恵を最大限享受してきました。しかし、脱炭素社会の到来を前に、将来の予測が困難な多くの社会課題に直面しています。

先の見えないこの難局を乗り越えていくために、多様な意見や視点を包摂し、様々なプレーヤーと共創・協業することができる人財を発掘・育成していくことが、避けては通れないきわめて重要な経営課題と考えています。

当社は創業以来、「人が資本」「人が中心の経営」という考え方を大切にしてきましたが、あらためて人財戦略を経営戦略の根幹に据えました。どのような未来が来ても、しなやかに、逞しく、未来を切り拓いていく人財集団を作ることを、社長である私の責務だと認識しています。

具体的な取り組みとしてこの1年間、女性活躍・男性育休・LGBTQへの理解・障がい者雇用拡大などDE&Iの深化が進みました。また、社内副業制度や部門横断的なワークショップ開催、国内外大学院をはじめとする教育機関や自治体などとの社外交流を通じて、従業員が新たな価値創造に挑戦できる環境整備も進めてきました。今年度は、全ての従業員が個々人の能力・個性をいかんなく発揮できるよう、ライフキャリアプランをさらに充実させるとともに、人事・評価制度見直しも実施します。また、従業員が新たなことに挑戦するための、心的・時間的なゆとりを確保できるよう、全社で展開している生産性向上30%PJを推進することで、失敗を怖れず様々なことに挑戦する人財を後押しし、当社の持続可能な成長につなげてまいります。

サステナビリティ経営の推進 ~非財務価値向上を目指します~

環境負荷の大きい化石燃料を中心としたエネルギー事業をメインとしている当社であるからこそ、環境課題や社会課題を経営課題として位置付け、率先してその解決に貢献してまいります。攻めとしての事業構造改革と人的資本の価値向上に邁進すると同時に、守りとしてのサステナビリティ経営を推進し当社の企業価値向上を図っていく所存です。

最近の取り組みを2例ご紹介いたします。一つ目は、Scope3に対する目標値の設定です。2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けた当社の取り組み姿勢をより一段と明確にすべく、自社操業に伴うCO2排出量のScope1+2に対する目標値に加え、サプライチェーン全体のCO2排出量であるScope3に対する目標値を新たに設定しました。供給エネルギー量に対するCO2排出量原単位であるCarbon Intensityを指標として導入し、2030年度時点で2020年度対比10%削減し、2040年度時点で2020年度対比半減することを目指してまいります。
Because our company's main business is energy, centered on fossil fuels that have a large environmental impact, we position environmental and social issues as management issues and take the initiative in contributing to their resolution. At the same time as we strive business structure reforms offensively and improve the value of our human capital, we will also promote sustainability management as a defensive measure to increase our corporate value.

Here are two examples of recent initiatives. The first is to set targets for Scope 3. In order to further clarify our initiative to achieve a carbon neutral society by 2050, we have set a new target for Scope 3, which is the CO2 emissions of the entire supply chain, in addition to the target for Scope 1+2, which is the CO2 emissions from Idemitsu’s operations. Idemitsu has introduced Carbon Intensity* as an indicator of CO2 emissions per unit of energy supplied, and aims to reduce Carbon Intensity by 10% from the FY2020 level by FY2030, and by half from the FY2020 level by FY2040.

Carbon Intensityの2030年度時点で2020年度対比10%、2040年度時点で2020年度対比半減する

二つ目は、コーポレートガバナンスの要である取締役会の充実です。より一層透明性が担保された議論の場にするため、社内取締役が納得しても社外取締役によるブレーキがかかり、閉鎖性・同質性に陥らないための仕組みを整えました。取締役会とは別に、社外取締役への説明機会を充実させ、財務価値の向上策、事業構造改革投資方針、人的資本を始めとする非財務価値の向上策などに関してオープンに討議を重ねてまいりました。加えて、取締役などに対する役員報酬制度を改定し、非財務指標を含む業績連動報酬を50%に引き上げ、当社の持続的な企業価値向上に対するコミットをさらに強めました。

当社だけが先行き不透明で混沌とした世界に適応し、生き残ることができれば良いとは考えておりません。国・地域社会の持続的成長に微力ながらでも貢献するという強い使命感を持って、私はサステナビリティ経営に取り組んでおります。

※ 社会に供給するエネルギーをいかに低炭素エネルギーに転換できているかを表す指標

ステークホルダーへのメッセージ

真に働く 国・地域情勢、そこに暮らす人々を想い、考えぬき、働きぬいているか、日々自らを顧みて更なる成長を目指す。かかる人が集い、一丸となって不可能を可能にする。 私たちは、高き理想と志を掲げ、挑み続ける。

企業理念

ステークホルダーの皆さまの中には当社の今後の事業の先行きが不透明であると感じておられる方がいらっしゃるかと思います。私自身、機関投資家をはじめとした資本市場との対話を通じて、財務面はもちろんのこと、非財務面も含めた企業価値向上経営ができているかが問われていることを実感しました。

2023年3月に東京証券取引所より「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」が公表されたことを受け、5月の決算説明会では市場評価についての当社の認識をご説明しました。また、取締役会においては企業価値向上に向け継続的に議論を重ね、第2四半期決算においては25年度ROE目標を上方修正、株主還元方針の一部見直しとともに資本コスト低減に取り組むことで早期にPBR1.0倍超を目指すことを公表しました。

今後、より幅広いステークホルダーの皆さまに当社をご理解いただけるよう、2024年春には公式ウェブサイトを大幅リニューアルし、当社グループの取り組みをより具体的かつリアルタイムで発信してまいります。是非ご期待ください。

2030年および2050年ビジョン達成に向けて、「変革」を成し遂げるには多くの挑戦が必要であり、挑戦を通じて、考え抜き、働き抜くことで人が育ちます。これは、当社の経営目的そのものです。そういった意味では、現在のこのような環境は「人が育つ」絶好の機会であり、企業理念「真に働く」を広く社会に体現できるまたとないチャンスであると確信しています。まさに当社の実力が試される時です。ステークホルダーの皆さまにおかれましては、引き続き当社へのご理解ならびにご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。