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トップメッセージ

トップメッセージ

「真に働く」ことを追い求め、会社のカタチを変え、
2050年カーボンニュートラルへ挑戦します。

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コロナ禍との闘いで自問し続けた1年

新型コロナウイルス感染症に罹患された方々へお見舞い申し上げるとともに、お亡くなりになった方々に哀悼の意を表します。また、医療従事者の皆さまや社会生活の維持のために尽力いただいている全ての皆さまに、心より感謝申し上げます。

昨年は、世界中の人々がコロナ禍によりもたらされた未曾有の危機への対応に明け暮れた一年となりました。残念ながら、今なおその闘いは収束の目途が立っておりません。

コロナ禍により、世界経済は大きな打撃を受け、石油製品をはじめエネルギー需要は大きく落ち込みました。例えば2020年度のガソリン等の国内石油製品需要は前年比6%程度、ジェット燃料については約50%、それぞれ減少しました。また自動車やディスプレイの需要減少等により、潤滑油、機能化学品、電子材料の需要・販売は共に減少しました。当社のほぼ全ての事業がコロナ禍の影響を受け、統合新社としての中期経営計画初年度から、大きく計画を下回ることになりました。

コロナ禍はいずれ収束します。しかし、私たちを取り巻く事業環境は従前とは様変わりしています。したがって、この変化を一時的な要因として捉え、嵐が通り過ぎるのを待つという姿勢ではなく、むしろ、当社の事業やコスト構造、組織体制を徹底的に見直す、言い換えれば「会社のカタチ」を変革していく好機と捉えております。

今後どのように会社を変えていくかを考える上で将来の航路を示す羅針盤が必要となります。そこで、そもそも当社の存在意義は何か、当社が取り組むべき社会課題は何か、ということを原点に返って再確認することにしました。

企業理念の成文化

まず、両社の歴史、創業者や先人たちが大事にしてきた言葉やその背景にある思い、価値観を一つ一つ丁寧に拾い上げる作業に取り組みました。統合前の旧両社はともに100年以上の長い歴史を持ち、日本のエネルギーセキュリティを支えてまいりました。一見すると全く異なる社風を持つと思われる両社ですが、「仕事を通じて人が育ち、無限の可能性を示して社会に貢献する」という根底に流れる価値観は共通でした。この価値観を体現し、当社の存在意義を示す統合新社としての企業理念の成文化を、多くの従業員が切望しており、その思いに背中を押される形でプロジェクトを進めました。

しかしそれは、想像以上に困難な作業でした。旧両社の言葉はその出身者には馴染みがありますが、他方の出身者に響くとは限りません。だからと言ってよそ行きの言葉を並べても共感は得られません。私たちは、両社の史実や先人たちの足跡に照らして共通の価値観を表す言葉を紡いでいく作業に挑みました。

そして、「国・地域社会、そこに暮らす人々を想い考えぬき、働きぬいているか。日々自らを顧みて更なる成長を目指す。かかる人が集い、一丸となって不可能を可能にする。私たちは、高き理想と志を掲げ、挑み続ける。」というステートメントに行き着きました。このステートメントを一言で表したのが「真に働く」という言葉です。「出光の存在意義は何か?」と問われれば、一言で「真に働く」と答えます。企業理念は当社の存在意義、社会への提供価値を示し、従業員一人ひとりの判断の拠り所となります。我々は今後もこの言葉を胸に刻み、「真に働く」ことを追い求め続けてまいります。

また、「人間尊重」を経営の原点と位置付けることにしました。100年前に今日の社会を予測することができなかったように、2050年、ましてや2100年を明確に思い描いて今を経営することは困難です。けれども「人」が育っていれば、意志を受け継いだ従業員たちがその時代を切り拓いていくに違いありません。だからこそ「人の成長」が何よりも大切であり、利益を上げるための手段として人を育成するのではなく、事業を通じて人の成長を促進するのが当社です。今後カーボンニュートラルに向けて会社のカタチを大きく変えていくことになります。厳しい経営環境の中でも従業員が安心してチャレンジできるよう、強固な経営体質を維持し、人が成長する企業にしていくことが社長としての私の役割だと考えております。

2030年ビジョンの策定

次に、当社が2030年時点で到達していたい姿として、2030年ビジョン「責任ある変革者」を定めました。100年超にわたって産業や暮らしに不可欠なエネルギーと素材の安定供給という社会的使命を果たし、地域と共に成長を遂げてきた当社にとって、世界的な気候変動問題、高齢化社会の進展は、必ず解決しなければならない社会課題です。しかし、エネルギーの安定供給の責任を放棄してカーボンニュートラルに突き進むのでは本末転倒です。当社は、多様なエネルギーの供給責任を果たしながら、同時に低炭素社会の実現に貢献していく所存です。この考えを表現したのが、「責任ある変革者」です。

「カーボンニュートラル・循環型社会へのエネルギー・マテリアルトランジション」、「高齢化社会を見据えた次世代モビリティ&コミュニティ」、「これらの課題解決を可能にする先進マテリアル」といった事業ドメインを通じて、「地球と暮らしを守る責任」、「地域のつながりを支える責任」、「技術の力で社会実装する責任」という3つの責任を果たしていく所存です。

なお、当社の企業理念、2030年ビジョンを広く国内外に発信する上で、英語表現を工夫してまいりました。“真に働く”は“Truly Inspired”、“責任ある変革者”は“Your Reliable Partner for a Brighter Future”としており、これまでに述べた当社の思い、姿勢が伝わるように表現しております。

中期経営計画の見直し

今般、2019年11月に公表した中期経営計画の見直しを実施しました。前述の通り、コロナ禍によって当社の主力の燃料油事業は大幅な需要減少に見舞われました。加えて世界各国がグリーンリカバリーを志向する中、日本においても昨年10月に2050年カーボンニュートラル宣言がなされ、これまで以上に脱炭素化が加速することが想定されます。化石燃料ビジネスを主体とする当社が、こうした環境変化に対し高いレジリエンスを発揮し、将来にわたってサステナブルな企業であり続けるために、中長期戦略を再構築すると同時に、それぞれの取り組み・打ち手をさらにスピードアップさせる必要がある、こうした考え方に基づいて見直したものです。

2030年ビジョンの実現のため、「ROIC経営の実践」、「ビジネスプラットフォームの進化」、「Open・Flat・Agileな企業風土醸成」を2030年に向けた基本方針と定め、実行していくことといたしました。

まず、「ROIC経営の実践」は、コロナ禍、カーボンニュートラルシフトという大きな環境変化があり、将来の不確実性が高まっている中で、資本効率性をより重視し、B/Sをより身軽にして、企業としてのレジリエンスを高めることを狙いとしています。ポートフォリオのマネジメントはもちろん、ROICを各事業のKPIへ適切に落とし込み、成果を的確に評価できるパフォーマンスマネジメントの手段としても活用してまいります。また投資判断においてはインターナルカーボンプライシングも活用しながら、GHG排出量のもたらす経済的インパクトを参考情報としても取り入れ、投資判断をしてまいります。そして合理化で生み出したキャッシュを、「2030年ビジョン」で示した3つの事業ドメインに大胆に投入していきます。こうしたポートフォリオマネジメントの狙いは、既存事業の構造転換、エネルギーとマテリアルのトランジションを進め、グループ全体を成長軌道に乗せていくことにあります。ポートフォリオ転換の構想についての大きな目玉である、apollostationの「スマートよろずや」化、コンビナート全体での「CNX(カーボンニュートラル・トランスフォーメーション)センター」化については、本レポートの内容を是非ご覧ください。

基本方針の2つ目は、「ビジネスプラットフォームの進化」についてです。当社はデジタルトランスフォーメーションを鋭意進めてまいります。この4月にDX認定を取得、6月にDX銘柄に選定され足場固めは進んでおり、さらに加速をすべく、社内の業務改革のみならず、目を外に向け、お客さまあるいはエコシステム・ネットワークに対する価値提供に努めてまいります。また、ガバナンスに関しては、取締役会のメンバーを少数かつ経営課題に即した構成とするとともに、重要課題の議論に重きを置いた運営を実現してまいります。

基本方針の3つ目は「Open・Flat・Agileな企業風土醸成」です。当社の経営の原点は「人間尊重」であります。これまでも「人が中心の経営」、「人は無限のエネルギー」と申し上げてきましたが、何にも代えがたい当社の経営資源は「人」です。多様な価値観を持った従業員一人ひとりが、多彩な力を最大限発揮するとともに、共創による化学反応を引き起こすことのできる企業風土、「会社の匂い」をつくり上げることこそが、我々経営陣の責務であると認識しております。この認識の下、「理念・ビジョンの浸透」、「組織改革」、「働き方改革」の3点の取り組みを進めます。

このたび成文化した企業理念、新たに策定した2030年ビジョンをグループ内に浸透させ、組織の基軸を確立し、組織としてのレジリエンスを高めてまいります。またタテヨコの組織改革を断行し、積極的な権限移譲、スパンオブコントロールの最適化を推進し、従業員の成長と企業としての成長を両立させてまいります。

また、多彩な力がよりスピーディーに、よりコラボレーティブによりイノベーティブに発揮されるよう、働き方改革を推進しています。既に、多様な価値観に基づく多様な働き方に対応できる制度・環境を整備しており、ビジネスシーンに応じて場所と時間を選択する働き方が実現しています。なお、理念・ビジョンの浸透度については、定期的に測定し向上を図っていきます。

D&Iの更なる推進

当社が2030年ビジョンの実現に向け大きく事業構造を変革していく上で、「Open・Flat・Agileな企業風土醸成」と双璧をなすのが「ダイバーシティ&インクルージョン」の推進です。これまでの延長線上に将来を描くことが難しい中で、多様なメンバーの強みや個性を活かしたマネジメントが極めて重要になります。多彩な従業員が活き活きと働き、成長し、周囲と化学反応を起こしながら、新たな価値を共創できるよう取り組んでまいります。そのためには従業員の健康が何よりも大切であり、ニューノーマル時代におけるリモートを組み合わせた働き方やライフスタイルにおける「健康経営」を推進していきます。また、本年7月に、今後想定される事業構造改革や業容変更によって生じる仕事の変化に一人ひとりが適応し、自律的なキャリア形成を考える機会を提供すべく、ライフキャリアサポートセンターを開設しました。女性活躍拡大については、女性活躍推進法に関する目標をはじめとして定量的な目標を設定し推進してまいります。同時に仕事と育児・介護の両立支援制度の拡充を図り、女性だけでなく多様な人材が活躍できる柔軟な働き方につなげてまいります。

障がい者雇用については、障がいの有無に関係なく一人ひとりが持ち味を生かし、仕事を通して社会の役に立てるよう、障がい者の自立支援・就労機会の提供に取り組んでおり、更なる拡大を図ってまいります。また、当社は性自認・性的指向・価値観などの多様性を尊重し、一人ひとりが自分らしく、個々の能力を存分に発揮できる環境づくりに向けて、積極的に取り組んでまいります。

ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みは経営の最重要課題

当社のサステナビリティを考える上でESGへの取り組みは最重要課題の一つです。SDGs(持続可能な開発目標)で掲げられた目標と個々の事業活動を関連付け、重要課題(マテリアリティ)を明確にして取り組んでおります。特に「7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに」という難題に真正面から取り組み、「考えぬき、働きぬき」「一丸となって不可能を可能に」していきたいと考えております。

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環境面

エネルギーの安定供給という責務を果たしながら、積極的にCO2排出量の削減に取り組みます。今後も製油所・工場における省エネルギー活動をさらに進め、環境配慮型商品やサービスの提供・再生可能エネルギー発電の拡大など、事業活動を通じた排出量削減に取り組んでまいります。2030年度に向けたCO2削減目標値を200万tから400万tに引き上げるとともに、2050年での自社操業に伴うCO2排出量ネットゼロを目指します。また、バリューチェーン全体でのCO2排出量削減にも取り組んでまいります。なお、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)へ賛同しており、気候変動に関するガバナンス、戦略、リスクと管理、指標と目標を整理した上で開示してまいります。

社会面

サプライチェーン全体で持続可能な社会の実現に貢献することを目的に、サステナブル調達ガイドラインを昨年新たに策定しました。また、世界各地域で事業を展開する当社において、人権の尊重は事業の根底をなす重要事項と認識しております。2020年度は人権デューデリジェンスの取り組みを開始し、国内外の関係会社における人権リスクの所在を特定しました。2021年度は抽出したリスクへの対応策を取りまとめ、順次実行してまいります。また、エネルギー事業を手がける私たちが社会と共存していくためには、「安全の確保」と「品質保証」が枢要な課題であることは申し上げるまでもありません。引き続き、無事故への挑戦という目標を掲げ、製油所・事業所の安全・安定操業を継続し、保安力の向上、安全文化の醸成に取り組んでいきます。

ガバナンス面

コーポレートガバナンスの要である取締役会の更なる充実に取り組んでおります。取締役会の実効性評価を表面的・形式的なもので終わらせないよう、丁寧に議論を行い、改善すべき課題を抽出しております。例えば、取締役会において実質的な討議の時間を確保すべく、議題の説明等は事前説明に重きを置くよう見直しました。また、社外役員間の意見交換の場として、社外役員ミーティングを四半期に一回は開催しております。当社の取締役会は、独立社外取締役が3分の1以上を占めておりますが、人選にあたってはスキル・キャリアマトリックスにより必要とされる知識・経験・能力等を明確にしております。また、多様性の観点から、今回女性取締役をこれまでの1名から2名に増やしました。独立社外取締役で構成される指名・報酬諮問委員会においては、CEOの後継者計画、CEO・役員の選解任、役員報酬について審議し、取締役会に答申する仕組みを採用しております。代表取締役の業績連動賞与について、財務指標のみならず、ESGを含む全社の非財務面での成果を反映するよう見直しました。

ステークホルダーへのメッセージ

当社は2019年4月に昭和シェル石油と経営統合し、今年3年目を迎えました。当社の事業環境に目を向けると、国内石油需要の中長期的な減退や、全世界で取り組むべき気候変動問題等、当社の事業の持続可能性に大きな影響を与えています。今般成文化した企業理念「真に働く」を基軸に、2030年ビジョン「責任ある変革者」の実現に向け、全従業員一丸となって難局に挑んでいきたいと考えております。そして、どのような環境変化に対しても、柔軟かつしなやかに対応できる「レジリエントな企業体」となることで、今後もエネルギー企業としての社会的使命を果たし続けたいと考えております。

当社が今後も社会的使命を果たし、新たな価値を創造していくためには、ステークホルダーの皆さまとの協働が欠かせません。国内外でお取引いただいている全てのお客さま、事業を展開する地域の皆さま、地域に密着した特約販売店、物流や保全の協力会社、産油国をはじめとする国内外のサプライヤー等のビジネスパートナーの皆さま、そして多様なバックグランドを持った従業員と共に、「人の力」を結集して新たな価値創造に挑戦し続けてまいります。これからも永きにわたりご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

出光興産株式会社
代表取締役社長

木藤 俊一

出光興産, 株式会社ディ・エフ・エフ