当社グループでは、事業部門、研究開発部門および知的財産部が連携して特許や商標などの知的財産の出願・権利化、維持管理とその活用を行い、当社グループの事業発展やブランド価値の向上に貢献しています。
また、他社の知的財産権の尊重や秘密情報の管理等の知的財産に関するリスクやコンプライアンスについて、適切なプロセスの設計、運用を実施し、リスク発生の防止に努めています。
知的財産活動は、知的財産部と各事業部に知財担当者を配置した体制で推進しています。
当部は、主にコーポレート機能を担い、特許情報解析、契約締結や他社との係争対応、秘密情報の管理、新規事業の立ち上げ支援、知財リスクのマネジメントなどを行っています。
事業部門の知財担当者は、事業部門の戦略や事業特性にあわせた知財戦略を策定し、迅速かつ効率的な知的財産の取得、活用による事業展開を図っています。
当社グループでは、事業の市場優位性確保のため、特許群の構築と活用を継続的に進めています。 近年は、特許の取得方針を量から質の重視に転換しており、国内特許の公開件数は減少傾向にありますが、海外に出願する特許の割合は増加傾向にあります。また、グローバルな海外展開に必要な海外特許の保有件数も一貫して増加しています。
当社が保有する特許には、社外から高く評価され表彰を受けているものや事業収益に極めて大きな貢献があり社内報奨を受けているものも多数あります。
米国サンノゼで開催されたシンポジウム「Display Week 2022」※において、蛍光型青色材料を用いた有機EL素子の世界最高レベルの発光効率と長寿化に成功した当社の新発光方式の開発成果に対し、有機EL技術部門の最優秀論文に選定されました。
※ディスプレイ関連の世界最大の学会であるSociety of Information Display が主催するシンポジウム
文部科学大臣表彰として令和4年度科学技術賞(開発部門)を3名の社員が受賞しました。 同賞は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的とするものです。 受賞業績は、「高効率かつ長寿命の青色有機EL発光素子の開発」です。
当社は、平成30年度全国発明表彰において、有機EL素子および有機発光媒体の発明(特許第4221050号)で「恩賜発明賞」と「発明実施功績賞」を受賞しました。
全国発明表彰は(公社)発明協会が主催する表彰制度で、日本の科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的として、日本を代表する研究者・科学者の功績を顕彰しています。日本の知的財産関係の表彰では、最も格式の高い表彰です。
実用化が困難だといわれていた青色発光材料の開発において、それまでの青色材料よりも、さらに色純度の高い青色を実現し、併せてディスプレイの長寿命化に大きく寄与することで、有機ELフルカラーディスプレイの実用化に大いに貢献したことが高く評価されました。
当社は、知的財産権制度活用優良企業等表彰として平成30年度知財功労賞「特許庁長官表彰」を受賞しました。
知財功労賞とは、経済産業省特許庁において知的財産権制度の発展などに貢献した個人および企業などを表彰する制度です。
受賞のポイントは、当社の知財活動計画の推進が高く評価されたことです。
当社は、従業員の発明意欲を高め、事業を支える発明の創出を促進するため、事業収益に大きな貢献をした発明の発明者を報奨する「職務発明実績報奨制度」を設けています。2021年度は、電子材料分野、機能性樹脂分野の2分野において事業収益に大きな貢献をした発明の発明者21名が「職務発明実績報奨」を受賞しました。
従業員の知的財産マインド※の醸成と事業や研究に必要な知財知識の習得のため、特許出願コース、情報調査コースや技術契約コースなど複数のコースからなる研修体系を整備し、毎年研修を行っています。また、他社との取り組みが活発な事業部への秘密情報管理の教育など、事業部門ごとのニーズに合わせた個別研修も積極的に行っています。 知財担当者については、階層別研修と先輩知財担当者によるOJT等によって高い専門能力を取得できるようにしています。また、グローバルな事業展開を支える知財人材の育成のため、定期的に知財担当者を海外の特許事務所に研修派遣をしています。
知的財産部主催で2019年11、12月に4回にわたって特許実務研修を行い、13部署から243名が参加しました。
本研修は、社員のニーズに合わせた”実務で実践できる手法や方法論を習得できる”7コースを開設しています。事業のグローバル展開が進む中、特許をはじめとする知的財産への理解はこれまで以上に重要になっていることから、「実際の研究成果に基づき知財担当者と発明の本質(捉え方)についてディスカッションする」「他社の情報流出事例についてグループワークで問題点と対策を検討する」など、各コースに実践的な内容を盛り込んでいます。
2019年7月22日、30日の二日間、主に若手技術系社員を対象とした基礎特許研修を開催しました。知的財産の役割や重要性に関する認識を深めてもらうことを目的として毎年開催しており、今年は11事業部門・研究所から40名が参加しました。特許法の概要に関する説明だけでなく、情報検索の実習なども行いました。受講者からは、「自社の特許を例にした新規性あり・なしの説明がされていて、さらなる理解につながった」「検索ツールについて、もっと知りたい」といった感想が寄せられ、有意義な研修となりました。11月には、より実践的な内容に踏み込んだ「特許実務研修」を実施し、これからも全社的な知財知識の浸透とスキル向上に努めていきます。