当社は「カーボンニュートラル、循環型社会への貢献」「地域社会への貢献(エネルギー&モビリティ)」」などを重要課題とし、全社の技術を結集するとともに、外部技術も活用する戦略を展開しています。
当社グループの研究開発体制は、次世代技術研究所と各部門の研究所から成り立ち、専門的な開発を担当しています。全社を横断する研究開発委員会も設置し、方向性や戦略の検討だけでなく、研究所間の連携を強化し、技術力を向上させています。
研究分野 | 研究施設名 | 国内 | 海外 | 取り組み概要 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
コーポレート 研究 |
次世代技術 研究所 |
環境・エネルギー研究室 | ● | GHG削減・資源循環(バイオマス・CO2資源化由来燃料・化学品) | ||
先端有機材料研究室 | ● | 高機能材料の開発(有機高分子材料) | ||||
先端無機材料研究室 | ● | 高機能材料の開発(無機材料) | ||||
解析技術センター | ● | グループ全体の幅広い分野への高度分析・解析ソリューションの提供(計算科学を含む) | ||||
出光興産次世代材料創成協働研究拠点 | ● | 次世代材料の創成と基盤技術の強化・拡充、CNXソリューション領域の技術獲得 | ||||
生産技術 | 生産技術センター | ● | 生産設備の設計~建設~運転・品質・保全に関わる技術開発 生産プロセスの開発を通じた技術立脚型の新規事業開発支援 |
|||
潤滑油 | 営業研究所 | ● | 潤滑剤およびトライボロジー(潤滑に関する技術)の研究・開発 | |||
Idemitsu Lubricants America Corporation R&D Center | ● | 潤滑剤の地域密着型研究・開発 営業研究所(日本)をマザー研究所とした潤滑剤の商品・技術のグローバル展開 海外の現地ニーズに合ったスピーディーな商品開発と技術サービス提供 |
||||
出光潤滑油(中国)有限公司 開発センター | ● | |||||
Idemitsu Lube Asia Pacific Pte. Ltd. R&D Center | ● | |||||
日本グリース(株)技術研究所 | ● | グリース、熱処理油、金属加工油等の研究・開発 | ||||
機能化学品 | 機能材料研究所 | ● | エンジニアリングプラスチック、粘接着基材、液状ゴム、電子材料などの研究開発・用途開発 触媒・合成・材料設計・コンパウンド・実用評価技術をベースとしたソリューション提供 |
|||
出光ユニテック(株)商品開発センター | ● | 合成樹脂加工製品の研究開発 | ||||
出光ファインコンポジット(株)複合材料研究所 | ● | 市場ニーズに対応した複合材料の研究開発 | ||||
電子材料 | 電子材料開発センター | ● | 有機EL材料の研究・開発 | |||
Idemitsu Research and Business Development Europe AG | ● | |||||
機能舗装材 | アスファルト技術課 | ● | アスファルトおよびその用途に関する基礎研究および応用研究 高機能アスファルトの開発 |
|||
農薬・機能性飼料 | (株)エス・ディー・エスバイオテック つくば研究所 | ● | 微生物や天然物に由来する病害虫防除剤、飼料添加物などの開発 有用動植物保護、防疫を目的とした安全で有用な製品開発 |
|||
リチウム電池 材料 |
材料開発センター | ● | 全固体リチウムイオン二次電池(全固体電池)のキーマテリアルである硫化物系固体電解質材料の開発と製造プロセス開発、量産化技術開発 | |||
生産技術開発センター | ● | 上記固体電解質材料の商業化に向けた製造技術開発および量産設備設計・建設 | ||||
技術企画室 | ● | 次世代電池材料、リサイクル技術等の技術探索・検討 | ||||
太陽光発電 | ソーラーフロンティア(株)国富事業所 | ● | 新事業開発に向けたソリューション探索 結晶シリコン系パネルを含む太陽光パネルのリサイクル事業化に向けた研究開発 |
|||
石炭および環境 | 石炭・環境研究所 | ● | 民間唯一の石炭専門研究 GHG削減に貢献するバイオマス燃料、カーボンリサイクル、高効率燃焼技術等、低炭素社会に対応した石炭のクリーン利用技術開発および技術サービス提供 |
当社グループは、燃料油、高機能材、資源、さらには新規事業創出のための研究開発に取り組んでいます。研究開発体制の下、互いに密接に連携して研究開発活動を行っています。
研究開発費 | 23,640 | |
---|---|---|
セグメント別内訳 | 燃料油 | 396 |
高機能材 | 12,703 | |
電力・再生可能エネルギー | 258 | |
資源 | 368 | |
その他 | 9,914 |
当社グループの技術力は、国際的にも高い評価を得ています。その一例として、ESG評価機関のMSCI社が評価する項目の一つである「Opportunities in Clean Tech」において、当社は所属する産業サブグループ※の中で、2017年から6年連続でグローバル1位に位置しています。(下表)
今後も当社グループは高い研究開発力を最大限発揮し、他社などとの協働を通じて、地球規模での課題解決に貢献していきます。
順位 | 2020 | 2021 | 2022 |
---|---|---|---|
1 | 出光興産 | 出光興産 | 出光興産 |
2 | A社 | A社 | A社 |
3 | B社 | F社 | F社 |
4 | C社 | G社 | G社 |
5 | D社 | H社 | H社 |
新規事業創出の鍵となる探索や調査などの研究開発初期ステージでは、自社の保有する技術や知見を活用する社内横断的な活動だけでなく、積極的に社外との連携を行うことによる、オープンイノベーションを取り組みの中心とし、事業ポートフォリオ変革に向けた新規事業創出の加速に取り組んでいます。
ベンチャーキャピタル※の運営ファンドを活用し、国内外のスタートアップ企業との連携を進めています。例として、バイオ・ライフソリューションにおいて2023年4月にバッカス・バイオイノベーション社に出資し、スマートセル開発の取り組みを開始しました。
2020年度に東京工業大学に設置した「出光興産次世代材料創成協働研究拠点」の活動を通し、東工大との先進マテリアル領域の注力分野とCNXソリューション領域の技術獲得を進め、2022年度は5件の特許出願、4件の学会発表を行う成果が得られました。さらなる事業創出拡大に向け、2023年に神戸大学との共同研究部門の設立やカリフォルニア大学サンタバーバラ校などとのアカデミア連携を開始しました。
中長期的な新規事業テーマの創出活動(先進マテリアルプロジェクト)は3期目となり、のべ30名の英知を結集し活動を続けています。取り組みにより創出されたテーマは社内での検討に限らず、大学・スタートアップとの連携を含めた推進により、事業企画の具体化を行っています。これらの取り組みを通じ、継続的な共創型イノベーション人財の育成も進めています。
MI (マテリアルズインフォマティクス)による研究開発の加速、DX推進強化に向けた取り組みを進めています。
アンモニアは、燃焼時にCO2を排出しないことから、石炭火力発電や船舶向けの次世代燃料として期待されています。 現在、アンモニアはハーバー・ボッシュ法(HB法)により製造されていますが、高温・高圧下で、窒素と化石燃料由来の 水素を反応させるため、製造時に多くのCO2を排出します。
当社では、NEDO※のプロジェクトに参画して検討を進め、東京大学の西林教授らが開発したMo触媒をもとに、開発した還元剤を用い、常温・常圧でも、窒素、水、再生可能エネルギーから連続的にアンモニアが生成することを見出しました。HB法に代わる画期的な技術確立を目指し、実用化に向けた開発を進めています。
先進マテリアル領域での開発強化・事業拡大には、検討中のテーマを早期に事業化することに加え、新たなテーマを継続的に創出していくことが重要です。そこで、テーマ探索のためのプロジェクト活動として、2022年に「先進マテリアルプロジェクト」を開始しました。先進マテリアルカンパニー各事業部の英知を集結させ、既存事業領域にとらわれない思考によって短期間でアイデア創出から事業化企画立案、検証を繰り返すことで先進マテリアル領域における新規事業の創出につなげます。そして、このプロジェクトを通じて共創型イノベーション人財を育成することで、変革の輪を先進マテリアルカンパニー全体に広げていきます。
当社は2006 年より多結晶酸化物※1半導体材料IGO(Indium Gallium Oxide)の開発を始めました。当社が開発したIGOは、従来の酸化物半導体では実現できなかった低温ポリシリコン(LTPS)※2と同水準の高い移動度を有することが特長です。第8世代以上の大型ラインにおいてもプロセス適性があり、ディスプレイ性能の進化と同産業の発展、ディスプレイの低消費電力化による低炭素社会の実現に貢献することが期待されます。
油脂はバイオディーゼル油の原料として広く使われていますが、近年はバイオジェット燃料やバイオプラスチックの原料としても期待されています。一方で、食料用途との競合や、パームヤシのプランテーションによる熱帯雨林の破壊が問題視されています。環境負荷が低いとされる廃食油の活用が進んでいますが、その賦存量には課題があります。
そこで当社では、地球上で最も賦存量が多いバイオマスであるリグノセルロース※原料から、微生物の力を用いて油脂を製造するプロセスの開発を進めています。世界最高水準の油脂生産量を持つ微生物を自然界から見つけ出し、さらに生産効率を高める技術開発を進めています。微生物による油脂生産を実用化することにより、環境負荷の少ない燃料原料および化学品原料の供給を目指しています。
NEDO「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の新市場創造技術開発」事業において、太陽電池の設置場所拡大へ向けた新技術の開発を進めています。特に、一般の電気自動車に太陽電池を搭載するための新技術開発として、自動車形状に搭載可能で高効率・低コストを実現する太陽電池モジュールの開発を目指した取り組みを、当社を含む複数の機関が連携・協力し実施しています。この太陽電池モジュールの開発のうち、当社はCISボトムセルの技術開発を行っています。なお新技術開発は、当社の関係会社であるソーラーフロンティア(株)の「CIS太陽電池」(銅(Copper)・インジウム(Indium)・セレン(Selenium)を材料とする化合物系の太陽電池)の技術を応用しています。