Research & Development (R&D) / Intellectual Property 研究開発・知的財産活動

研究開発

重点課題(マテリアリティ)への取り組み

当社は、「成長事業の拡大」「次世代事業の創出」「地球環境・社会との調和」を重要課題に掲げています。特に次世代事業創出を推進するため、2019年11月に社会課題・顧客ニーズを捉えた事業開発を推進する「Next事業室(現:地域創生事業室)」、2020年1月にデジタル活用を推進する「デジタル変革室(現:デジタル・ICT推進部)」、そして、2020年4月に技術立脚の事業開発を推進する「技術戦略室(現:技術戦略部)」を設立しました。社会の変化、顧客ニーズの多様化、環境負荷低減などを見据えた新たな事業の創出に向け、全社技術の連結化、さらに外部技術も積極的に活用し、早期実現を図る戦略を描いています。気候変動問題に関する国際的枠組みであるパリ協定の目標達成のためには、技術面でのイノベーションが不可欠です。当社グループは長年培ってきた各分野の技術開発力を活用し、気候変動をはじめとしたさまざまな社会問題の解決に寄与するイノベーションをこれからも生み出していきます。

出光興産, 株式会社ディ・エフ・エフ

研究開発体制

当社グループの研究開発体制は、コーポレート研究を主管する「次世代技術研究所」と、各部門にひも付く研究所から構成されており、各研究所において専門的な開発を行っています。また全社横断組織として、「研究開発委員会」を設置し、全社研究開発の方向性、戦略および課題に関する事項の検討を行うだけでなく、研究所間の連携も深め、技術力の強化に努めています。

研究分野 研究施設名 国内 海外 取り組み概要
コーポレート
研究
次世代技術
研究所
環境・エネルギー研究室   GHG削減・資源循環(バイオ燃料・バイオ化学品・CO2資源化)、バイオ素材の開発
先端有機材料研究室   高機能材料の開発(有機高分子材料)
先端無機材料研究室   高機能材料の開発(無機材料)
解析技術センター   グループ全体の幅広い分野への高度分析・解析ソリューションの提供(計算科学を含む)
出光興産次世代材料創成協働研究拠点   次世代材料の創出と基盤技術の強化・拡充
生産技術 生産技術センター   生産設備の設計~建設~運転・品質・保全に関わる技術開発
生産プロセスの開発を通じた技術立脚型の新規事業開発支援
潤滑油 営業研究所   潤滑剤およびトライボロジー(潤滑に関する技術)の研究・開発
Idemitsu Lubricants America Corporation R&D Center   潤滑剤の地域密着型研究・開発
営業研究所(日本)をマザー研究所とした潤滑剤の商品・技術のグローバル展開
海外の現地ニーズに合ったスピーディーな商品開発と技術サービス提供
出光潤滑油(中国)有限公司開発センター  
Idemitsu Lube Asia Pacific Pte. Ltd. R&D Center  
日本グリース(株)技術研究所   グリース、防錆油、切削油などの研究・開発
機能化学品 機能材料研究所   石油化学原料の高付加価値化による機能材料開発
特殊ポリカーボネート樹脂、機能性コート剤の研究・開発
出光ユニテック(株)商品開発センター   合成樹脂加工製品の研究開発
出光ファインコンポジット(株)複合材料研究所   顧客ニーズに応える複合材料カスタマーグレードの設計・開発およびその解析
電子材料 電子材料開発センター   有機EL材料の研究・開発
Idemitsu Research and Business Development Europe AG  
機能舗装材 アスファルト研究課   アスファルトおよびその用途に関する基礎研究および応用研究
高機能アスファルトの開発
アグリバイオ (株)エス・ディー・エスバイオテックつくば研究所   有用動植物保護、防疫を目的とした安全で有用な製品開発
微生物や天然物に由来する病害虫防除剤、飼料添加物などの開発
リチウム電池
材料
材料開発センター   全固体リチウムイオン電池のキーマテリアルである硫化物系固体電解質材料の開発と製造プロセス開発
次世代電池材料等の開発
生産技術開発センター   上記固体電解質材料の商業化に向けた大型工業化プロセス開発、設備設計および建設
太陽光発電 ソーラーフロンティア(株)国富事業所   結晶シリコン系パネルを含む太陽光パネルのリサイクル事業化に向けた研究開発
石炭および環境 石炭・環境研究所   民間唯一の石炭専門研究機関
GHG削減に貢献するバイオマス燃料、カーボンリサイクル、高効率燃焼技術等、低炭素社会に対応した石炭のクリーン利用技術開発および技術サービス提供
出光興産, 株式会社ディ・エフ・エフ

研究開発投資実績

当社グループは、燃料油、高機能材、資源、さらには新規事業創出のための研究開発に取り組んでいます。研究開発体制の下、互いに密接に連携して研究開発活動を行っています。

2020年度の研究開発投資額実績
  • (単位:百万円)
研究開発費 20,468
セグメント別内訳 燃料油 1,947
基礎化学品 0
高機能材 12,357
電力・再生可能エネルギー 996
資源 187
その他 4,979
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当社グループ技術力の外部評価

当社グループの技術力は、国際的にも高い評価を得ています。その一例として、ESG評価機関のMSCI社が評価する項目の一つである「Opportunities in Clean Tech」において、出光興産・昭和シェル石油は、所属する産業サブグループの中で、2017年から4年連続でグローバル1位に位置しています。(下表)
今後も当社グループは高い研究開発力を最大限発揮し、他社などとの協働を通じて、地球規模での課題解決に貢献していきます。

  • ※GICS(Global Industry Classification Standard)において、当社は「石油・ガス精製・販売」の産業サブグループに所属しています。
MSCI社による「Opportunities in Clean Tech 」のセクター内企業ランキング
順位 2020 2019 2018 2017
1 出光興産 出光興産 出光興産 出光興産
2 A社 A社 A社 A社
3 B社 D社 昭和シェル石油 昭和シェル石油
4 C社 B社 D社 C社
5 D社 E社 B社 D社
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具体的な取り組み

オープンイノベーションの推進

先進マテリアルの開発加速やコンビナートの「CNXセンター」化の実現のために、社外の知を積極的に活用するオープンイノベーションを推進しています。

  1. 技術戦略部は、技術領域のオープンイノベーションを統括し、社外連携を加速・推進するとともに、当社グループが保有する技術を事業部横断的に連結しています。
  2. ベンチャーキャピタルが運営するファンドに参画し、国内外のベンチャー・スタートアップが持つ技術シーズの探索に取り組んでいます。2020年11月にはスイスのクリーンテック系ベンチャーキャピタルEmerald Technology Ventures(本社:スイス チューリッヒ)が運営するオープンイノベーションファンドへの出資を行いました。
  3. 2020年4月に東京工業大学に開設した次世代材料創成協働研究拠点にて、次世代材料の創成と人材育成に取り組んでいます。
太陽光発電の主力電源化の推進に向けた新技術の開発
NEDO「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の新市場創造技術開発」事業において、太陽電池の設置場所拡大へ向けた新技術の開発を進めています。特に、一般の電気自動車に太陽電池を搭載するための新技術開発として、自動車形状に搭載可能で高効率・低コストを実現する太陽電池モジュールの開発を目指した取り組みを、当社を含む複数の機関が連携・協力し実施しています。この太陽電池モジュールの開発のうち、当社はCISボトムセルの技術開発を行っています。なお新技術開発は、当社の関係会社であるソーラーフロンティア(株)の「CIS太陽電池」(銅(Copper)・インジウム(Indium)・セレン(Selenium)を材料とする化合物系の太陽電池)の技術を応用しています。
産学融合による次世代材料の創成(東京工業大学と「出光興産次世代材料創成協働研究拠点」を発足)

当社と国立大学法人東京工業大学(以下、東工大)は次世代材料の創成を目的として、2020年4月1日に「出光興産次世代材料創成協働研究拠点」(以下、「出光協働研究拠点」)を東工大すずかけ台キャンパス内に開設しました。2000年代初頭より高分子材料分野を中心に幅広い領域で共同研究に取り組み、新規繊維・フィルム材料開発をはじめとして優れた成果を上げてきました。今回新設した「出光協働研究拠点」は、これまでの個別共同研究の枠を超え、「組織」対「組織」の連携により大型で総合的な研究開発を推進し、新たな価値創造を目指した次世代材料の創成と人材育成に取り組みます。
当社と東工大は、幅広い分野で高機能材料事業(潤滑油・機能化学品・電子材料など)を展開する当社の強みと、物質・材料をはじめとする広い領域にわたり、高度な学術的知見と最先端の科学・工学技術を保有する東工大の強みを融合し、新たな価値創造に挑戦し続けます。

クラゲ(海月)由来コラーゲン・ムチンの活用

クラゲはその美しい姿で水族館の人気者ですが、漁業や沿岸企業の事業などに悪影響を与えることがあり、廃棄にも費用がかかるため、資源としての活用が世界的に望まれています。関係会社の(株)海月研究所(以下、海月研究所)は、クラゲを原料とした有用成分を活用する技術を発明しました。クラゲ由来コラーゲンには再生が難しいとされている表皮の再生促進効果が確認され、再生医療分野や美容分野での展開が期待されています。また、クラゲ由来ムチンは変形性膝関節症の治療薬としての可能性が期待されています。海月研究所では、化粧品、医療分野においてクラゲの活用を提案しているほか、クラゲのコラーゲンを関節の痛みを軽減する機能性食品素材にするための臨床試験も目指しています。クラゲを有効な素材として活用することで、循環型社会に貢献するとともに、ライフサイエンス分野の未来を創造し、世界の人々のQOL(Quality of Life)向上に貢献することを目指します。なお、海月研究所は、サーキュラービジネス視点の取り組みが「Circular Yokohama」に取り上げられているほか、事業がSDGsの取り組みに合致するとして、「かながわSDGsパートナー」にも登録されています。

  • ※Circular Yokohama(サーキュラーヨコハマ):横浜市内におけるサーキュラーエコノミーへの取り組みを紹介するプラットフォーム
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