当社は、カーボンニュートラル・循環型社会の実現に向けて、自社グループの強みである「社会実装力」を発揮し、「人々の暮らしを支える責任」と「未来の地球環境を守る責任」を果たすことで、貢献していきたいと考えています。
その実現に向け、当社の気候変動関連対応の取り組みに関しては、2020年に賛同署名したTCFD提言のフレームワークに沿った形での情報開示を継続強化し、ステークホルダーの皆さまのご理解と協働の下で、関連取り組みを加速させていきたいと考えています。
当社は、2020年2月14日に、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、以下TCFD)提言に賛同し、署名しました。
領域 | TCFD提言 | 当社の開示 |
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ガバナンス | ① 気候関連のリスクと機会についての、取締役会による監視体制を説明する。 | |
② 気候関連のリスクと機会を評価・管理する上での経営の役割を説明する。 | ||
戦略 | ① 組織が識別した、短期・中期・長期の気候関連のリスクと機会を説明する。 | |
② 気候関連のリスクと機会が組織のビジネス戦略および財務計画に及ぼす影響を説明する。 | ||
③ 2℃以下シナリオを含む、さまざまな気候関連シナリオに基づく検討を踏まえて、組織の戦略のレジリエンスについて説明する。 | ||
リスクと管理 | ① 組織が気候関連リスクを識別および評価するプロセスを説明する。 | |
② 組織が気候関連リスクを管理するプロセスを説明する。 | ||
③ 組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが、組織の総合的リスク管理にどのように統合されているかについて説明する。 | ||
指標と目標 | ① 組織が、自らの戦略とリスク管理プロセスに即して、気候関連のリスクと機会を評価するために用いる指標を開示する。 | |
② Scope1、Scope2および組織に当てはまる場合はScope3のGHG排出量と関連リスクについて説明する。 | ||
③ 組織が気候関連リスクと機会を管理するために用いる目標、および目標に対する実績を開示する。 |
領域 | TCFD提言 | 当社の開示 |
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温室効果ガス排出 | Scope1、2、3の絶対排出量、排出原単位 | |
移行リスク | 移行リスクに対して脆弱な資産または事業活動の量と範囲 | |
物理的リスク | 物理的リスクに対して脆弱な資産または事業活動の量と範囲 | |
気候関連機会 | 気候関連の機会につながる収益、資産、事業活動の割合 | |
資本配備 | 気候関連リスク・機会に向けて配備された資本支出、資金調達、総額 | |
ICP | 組織内で使用されるCO₂排出量1t当たりの価格(内部炭素価格) | |
報酬 | 気候配慮に連動する役員報酬の割合 |
当社のコーポレートガバナンス体制概要は、こちら に記載の通りであり、気候変動対応に関する補足情報は以下の通りです。
化石燃料販売を主たる事業とする当社にとって、気候変動課題への取り組みは、中長期の時間軸で大規模な事業ポートフォリオ転換を伴う、最重要経営課題の一つです。
取締役会は、本課題をさまざまな角度から多面的に捉えて経営方針を定めるとともに、その方針に基づいたアクションが、迅速かつ着実に実行されることを監督する役割を担っています。
上記役割を果たすため、取締役会を構成する11名の取締役は、さまざまな分野において経験と実績を有する者で構成し、過半数の6名を、環境・社会・資源循環・地域創生・エネルギー政策の分野に強みを有する者で構成しています。
気候変動関連の主要な議案は、業務執行の最高審議機関である経営委員会に付された後、それらの中でも特に重要な内容については、取締役会に報告され、取締役会として、全社方針に基づいた執行が着実に行われているかを監督できる体制としています。
気候変動関連の取り組みは、全社横断的かつテーマが多岐にわたる取り組み課題であるため、カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向けた全社戦略の立案・遂行を加速させる必要があるという認識の下、2021年7月に、技術・CNX※戦略部を立ち上げ(2022年4月の組織改編で、CNX戦略室に改組)、全社CN戦略立案/GHG削減目標設定/CNX人財育成を社内関係部門と連携し主導しています。
各事業部門においても、全社方針に基づき、個別事業部門別のCN戦略を立案し遂行しています。これら、社内各部門が主導する気候関連課題への主要な対応については、重要な業務執行の意思決定を円滑かつ適正に行うための審議機関である経営委員会に付議され、全社方針に照らして、内容の審議が行われます。経営委員会の構成員に関しては、専門分野や管掌領域の多様性を重視した構成とすることで、部門横断的な課題やリスクについて、網羅的かつ実効性のある議論を行う体制としています。
当社の取締役(非常勤取締役および社外取締役を除く)および上席以上の執行役員の報酬体系は、①固定報酬、②業績連動賞与、③業績連動型株式報酬により構成しており、 ③業績連動型株式報酬には、カーボンニュートラル・循環型社会の実現に必要不可欠なCO2削減指標も含まれています。
気候変動対応の具体的な検討は、2050年までを射程範囲とした長期事業環境シナリオを策定し、シナリオのアウトプットを踏まえてリスクと機会を特定し、具体的な戦略立案へと進めています。
2019年に当社として最初となる事業環境シナリオの対外公表以降、社会の環境変化に応じて、随時シナリオの見直しを行い、本中期経営計画(2023~2025年度)の検討においては、3つのシナリオを想定し、その中でも、脱炭素が一番進展するIEAのネットゼロシナリオに類似する、「碧天+」シナリオを強く意識して計画策定しました。
「碧天+」シナリオでは、“1.5℃目標”の実現に向けて各国政府が急ピッチで対策を進め、非常に早いペースで種々の脱炭素技術が社会実装されることで、2050年CNが達成される世界を想定しています。このシナリオでは、再生可能エネルギーに加え、原子力発電や水素・アンモニア燃焼発電、CCS(Carbon Capture and Storage、炭素回収貯留)付き火力発電、合成燃料、ネガティブエミッションなど、さまざまな脱炭素技術が導入され、“総力戦”でパリ協定の目標が達成されます。また、アジア太平洋地域内の石油需要については2025年にピークアウトし、国内石油需要は2019年比で、2030年に3割減、2040年に6割減、2050年に8割減と見込んでいます。
2050年に向けた長期事業環境シナリオに基づき、気候変動に係わるリスクと機会の洗い出しを行い、各領域別に、想定される時間軸、財務影響レベル、並びに当社の対応を下表の如く取りまとめ、表中記載の内容に沿って、具体的な取り組みを進めています。
区分 | 内容 | 時間軸 | 財務影響※1 | 当社の対応 | ||||
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~2025 | ~2030 | ~2050 | レベル 1 |
レベル 2 |
レベル 3 |
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移 行 リ ス ク |
国内化石燃料需要の減少 | ● | ● | ● | ✓ |
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技術革新によるエネルギー価格、資源価格の低下 | ● | ● | ✓ |
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政府によるカーボンプライシングの本格導入 | ● | ● |
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化石資源採掘事業に対する規制、金融機関の慎重な投融資姿 |
● | ● | ✓ |
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炭素排出の多い企業に対するブランドイメージの低下 | ● | ● |
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物 理 リ ス ク |
自然災害や海面上昇による沿岸拠点の被害、操業への影響 | ● | ● | ✓ |
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異常降水や台風の頻発などによる陸上・海上輸送への影響 | ● | ● |
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機 会 |
化石代替燃料の需要拡大(固体燃料) | ● | ● | ✓ |
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化石代替燃料の需要拡大(ガス体燃料) | ● |
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化石代替燃料の需要拡大(液体燃料) | ● | ● |
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低炭素燃料/原料供給拠点の重要性拡大 | ● | ● |
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CN社会実現に貢献する製品、素材の需要拡大 | ● | ● | ✓ |
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次世代蓄電池の需要拡大 | ● |
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循環型社会実現に向けたリサイクルの本格拡大 | ● | ● |
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地域社会へのエネルギー安定供給 | ● | ● | ● | ✓ |
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電気自動車の普及拡大 | ● | ● | ● |
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再生可能エネルギーの需要拡大 | ● | ● | ● |
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分散型エネルギーシステムの進化、需要拡大 | ● | ● | ● |
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リスクと機会への対応としては、既存事業の収益強化・資本効率化を進めつつ、事業構造改革投資により、新規事業を創出し、事業ポートフォリオ転換を図ることで、2030年時点で、営業利益+持分損益ベースで、2022年度見通し対比+1,100億円の、2,700億円を目標としています。
上段に記載のリスクと機会一覧表に記載した当社対応の内、主要なものに関しては、2030年までに社会実装に取り組むテーマとしてピックアップし、関連取り組みを進めています。
社会実装テーマの詳細はこちら
2030年までの社会実装テーマの内、所管事業部門が明確なものは、事業部CN案件として各事業部門が主導して取り組みを推進する一方、その他の案件に関しては、経営直下型部門横断プロジェクト(2030年実装テーマ)として、経営意思決定を迅速化し、収益性を鑑みたメリハリある資源配分により、早期社会実装を図っていきます。
CNに資する新規事業拡大に向けた投資に関しては、本中期経営計画(2023~2025年度)の最終年度である2025年度までに2,900億円、2030年までは累積1兆円規模を計画しています。
CNに資する各案件は、今後の技術進展動向等によって、社会実装状況が大きく変わる可能性もあるため、さまざまな選択肢を同時並行的に走らせ、中期経営計画期間中に、各案件の社会的価値や投資効率を踏まえたスクリーニングを経て、投資案件を厳選していく予定です。
なお、新規プロジェクトに係る投資においては、プロジェクト前後での、Scope1、2、3排出量、ならびに他者の削減貢献量の変化を確認のうえ、内部炭素価格(インターナルカーボンプライシング、100$/t-CO2)を用いて感度分析を実施し、投資案件評価の際の参考としています。
当社のトランジション戦略は、経済産業省が主導する、クライメート・トランジション・ファイナンスのモデル事例として採択されています。
温室効果ガス(GHG)の排出量削減を考える際には、環境面のみならず、社会面、経済面に対してもプラスの影響を与えつつ、関連活動を推進していくことが重要だと考えています。
本認識の下、当社では、下図に記載のように、CO₂排出量削減のみに焦点を当てた環境への貢献、エネルギー供給をしつつCO₂削減を実現するという社会と環境への同時貢献、CO₂削減をしつつ収益を拡大するという環境と経済への同時貢献という3つの指標(目標値とモニタリング指標)を用いて、CO₂削減の取り組みを評価、管理する仕組みとしています。
自社操業(Scope1+2)に伴うCO₂排出量の削減
Scope3も含めた、エネルギー供給単位当たりのCO₂削減
Scope3も含めた、CO₂排出量当たりの収益レベル
日本政府が2050年カーボンニュートラルを表明したことを踏まえ、当社も2050年までに、自社操業に伴う排出量(Scope1+2)のカーボンニュートラル(=CO₂排出量ネット ゼロ)を目指します。その通過点として、2030年の削減目標に2013年比▲46%を掲げています。化石燃料を主に取り扱う当社においてエネルギーの安定供給を担保した上でのCO₂削減は最重要経営課題という認識の下、目標達成に向けて取り組んでいきます。
年度 | 2013 | 2020 | 2021 | 2022 |
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CO₂排出量※(千tCO₂) | 15,870 | 13,968 | 14,182 | 14,207 |
(エネルギー企業として、社会に供給する「エネルギー単位量当たりのCO₂発生量」をどれだけ低く抑制できるかを表す指標)
(企業全体として排出している「CO₂単位量当たりの収益レベル」をいかに引き上げているかを表す指標)
上記2指標は、いずれも社内用のモニタリング指標として使用しています。
激甚化する自然災害に対して、地震・津波・高潮などさまざまな被害を想定し、リスクを抽出し、災害発生時の製油所・事業所へのダメージの極小化と早期原形復旧をすることが極めて重要です。当社は保安力強化として設備への投資でハード面を強化するとともに、想定を超える災害に対しても減災対応の観点からソフト面の充実を図ることで、エネルギーの供給使命を今後も果たしていきます。
昨今では、勢力を維持しつつ縦断する台風が多くなってきており、気候変動が一因ともいわれています。台風によってもたらされる高潮は、沿岸地域に位置する製油所・事業所の浸水リスクを高めます。そこで当社では、今後想定される最大級の台風が製油所・事業所へ直接上陸するルートをシミュレーションし、高潮による浸水影響に関するリスク分析を実施しています。この分析結果を踏まえて、海水ポンプ室への浸水壁設置などのハード面での補強や防災対応マニュアルの充実によるソフト面での減災対策などの検討を行っています。
当社は化石燃料を主たる事業としており、自社の操業に伴うCO2排出量(Scope1+2)と比較して、自社製品をお客さまが使用される時のCO2排出量(Scope3)が非常に多いという特徴を有しています。
このため、カーボンニュートラル社会の実現に向けては、Scope1+2排出量の削減と並行して、Scope3排出量削減を含めた、グローバルレベルでのCO2排出量削減への貢献が重要と考えています。
2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けては、自社操業に伴う排出量(Scope1+2)のカーボンニュートラルを実現し、サプライチェーン全体での排出量(Scope3)においても、産業活動・一般消費者向けのソリューションを提供することで、カーボンニュートラルを目指します。
また、自社のScope1、2、3排出量に留まらず、グローバルレベルで社会全体のCO2排出量削減に事業を通じて貢献することを目指し、削減貢献量について定量化して取り組んでいきます。
Scope1+2 | 13,105 |
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Scope3(カテゴリ11) | 107,179 |
日本政府が2050年カーボンニュートラルの実現を宣言する中、その具体策の一つとして水素・アンモニアによる水素キャリア・チェーン実現に向けた官民による取り組みが加速しています。当社は、2020年度、国土交通省のカーボンニュートラルポート検討会に徳山事業所やグループ製油所が参画するなど、水素・アンモニアサプライチェーン構築に向けた検討を進めるとともに、海外からのブルー・グリーンアンモニア調達に向けた他社との協業を検討してきました。中でも徳山事業所は2014年に原油精製設備を停止し、石油化学原料の製造拠点として石油精製事業からの転換をいち早く完遂しました。2021年2月には従来比約30%の省エネルギー効果を発揮できる高効率ナフサ分解炉の稼働を開始し、さらに2022年稼働予定のバイオマス発電所の建設等、脱炭素に向けた取り組みを加速させています。これらの取り組みは、石油精製事業で従来使用していたインフラを活用することで、効率的に実現しています。また、当社は、(株)IHIと、当社徳山事業所においてアンモニアサプライチェーン構築に向けた検討に共同で取り組んでおります。徳山事業所の貯蔵施設・石油化学装置などの既存設備を活用し、同事業所のアンモニア輸入基地化、既設ナフサ分解炉等でのアンモニア混焼実証を検討しています。また、今後、海外からのブルー・グリーンアンモニアの輸入、コンビナート他近隣事業所へのアンモニア供給を検討します。両社の強みを生かして、世界的にも先進的なアンモニアサプライチェーンを早期に実現することで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。
当社、東芝エネルギーシステムズ(株)、東洋エンジニアリング(株)、(株)東芝、日本CCS調査(株)、全日本空輸(株)の6社は連携して、「持続可能な航空燃料(SAF)※1」を製造する、P2C※2による炭素循環ビジネスモデルを検討してきました。この取り組みが2021年8月、環境省の委託事業に採択され、今後6社は地域のインフラや特徴を生かしてカーボンリサイクルを地域内で実現させ、脱炭素化の促進と地域振興を両立させる検討を行います。具体的には、各社が持つ知見・技術や関連するプラント設備等を生かし、CO₂の分離回収からSAF製造、消費までの全工程について検討し、得られたデータ・知見を、地域における炭素循環社会モデルに反映させ、事業成立性を評価します。6社は本実証事業を通し、炭素循環に基づくSAFサプライチェーンの商業化や、地域の活性化の促進に貢献していきます。当社は、SAFの認証制度・規格調査、SAF混合設備および品質管理の基本計画作成の役割を担っています。
2020年5月に千葉事業所において、重油直接脱硫装置(RH装置)の効率化改造工事を実施しました。この工事はIMO(国際海事機関)が定める船舶用燃料の低硫黄分規制へ対応を図るものです。
徳山事業所に高効率ナフサ分解炉を新設、2021年2月に商業運転を開始しました。高効率ナフサ分解炉は、原料であるナフサを短時間で熱分解することでエチレンの得率を高め、熱効率を向上させます。これにより、従来の分解炉によるエチレン生産時と比較し約30%の省エネルギー効果が発揮でき、年間約16,000tのCO₂削減に寄与します。ナフサは粗製ガソリンとも呼ばれる石油製品の一つで、分解炉を経由し熱分解することで、エチレンやプロピレンなどといった石油化学製品の基礎原料となります。
徳山事業所ではエチレン製造装置により年間約62万tのエチレンを生産し、主に周南コンビナート(山口県周南市)に供給しています。今回、エチレン製造装置内にある旧型のナフサ分解炉2基を停止し、高効率ナフサ分解炉1基を新設しました。
2020年度から国内の油槽所17拠点他にて、当社グループである出光グリーンパワー(株)提供のCO₂フリー電力(契約電力3,732kW)を使用することとしました。
当社持分法適用会社の株式会社INPEXノルウェーはノルウェー現地法人INPEX Idemitsu Norgeを通じ、権益を有するスノーレ油田において、浮体式洋上風力発電導入の開発計画をノルウェー政府に提出し、同政府から承認を得ました。2023年5月には、スノーレ油田へ浮体式洋上風力発電による送電を開始しました。当開発計画は、ノルウェー西部ベルゲン市の沖合約200kmの位置に、定格8千kWの浮体式洋上風力発電設備11基(計88千kW)からなる洋上ウィンドファーム(名称:Hywind Tampen floating wind farm)を建設し、石油ガス生産設備へ直接接続するというもので、世界初の試みです。
当社は今後も、先進的な技術を積極的に取り入れ、資源事業における環境負荷低減を推進していきます。
日本郵船グループとボイラ制御最適化システム「ULTY-V plus™」を共同開発しました。ULTY-V plusTMの導入により石炭使用量が約1%削減でき、その結果、お客さまの経済性の向上とCO₂排出量の削減につながります。2019年3月には日本郵船グループと折半出資で、郵船出光グリーンソリューションズ(株)を設立、該社を核に提案販売に力を入れています。2021年度には、北陸電力(株)向けに4基受注し、この4基導入によるCO₂排出量は約10万トン/年の低減見込です。今後も国内外に向けた販売を進めていきます。また、石炭ボイラーにおけるバイオマス燃料の最適な混焼率を算出するシステム(製品名:「BAIOMIX™」(バイオミクス)、以下「本システム」)を開発し、2021年8月に販売を開始しましたULTY-V plusシステムへ本システムを搭載することで、石炭ボイラでのバイオマス混焼を最適に自動制御することが可能となります。
当社は、石炭火力発電所でのバイオマス混焼を拡大するため、粉砕性や発熱量などに優れ、石炭とほぼ同様に取り扱うことが可能な半炭化した木質ペレット「出光グリーンエナジーペレット」の開発を行っており、既存の石炭火力発電設備を利用したCO₂の低減に取り組んでいます。
今回開発した本システムは、「出光グリーンエナジーペレット」をはじめとしたバイオマス混焼による、機器や発電効率への影響・経済的負担を算定し、過去の混焼率データからAI(人工知能)が最適な混焼率を算出します。
なお、石炭とバイオマス燃料を既存設備で混合してから燃焼する方式に加え、バイオマス燃料を専用ラインから投入し石炭と炉内混焼する方式等、さまざまな燃焼方式で利用可能です。
また、当社グループは以下のように、成長事業分野において環境配慮型商品の開発を進めています。
当社グループは、再生可能エネルギー活用によるCO2削減やエネルギーの地産地消に資する取り組みとして、バイオマス発電事業に取り組んでいます。現在までに、高知県の土佐グリーンパワー(株)、福井県の(株)福井グリーンパワーへの出資や、製油所跡地を活用した京浜バイオマス発電所を展開してきました。
2023年1月には、グループ4カ所目となる徳山バイオマス発電所の営業運転を開始しました。当発電所は、2014年に閉鎖した徳山製油所(現:徳山事業所)の跡地の一部と既存のインフラを活用しています。
日本の国土面積(3,780万ha)の約7割は森林であり、そこで未使用のまま放置されている間伐材などの活用が長年の課題となっています。当社は、当面の間は、輸入木質ペレットとパーム椰子殻(PKS)を使用※しますが、中長期的には国産の間伐材や製材端材などを使用することで、環境保全に配慮した持続可能な森林づくりと林業振興、国内森林資源の循環利用に貢献します。
また当社は、山口県周南市が2021年1月に発足した、木質バイオマス材利活用推進協議会に発足当時から参画しています。豊富な森林資源とバイオマス発電設備を併せ持つ地域の特性を生かし、自治体と一体となって国産の木質バイオマス材利活用を推進し、エネルギーの地産地消と林業振興を通じて、循環型経済の構築と発展に貢献していきます。
地熱事業拡大の一環として、当社は、(株)INPEX、東京電力リニューアブルパワー(株)と共同で秋田県湯沢市における地熱発電所(名称:かたつむり山発電所、出力:1.5万kW)設置計画について建設段階への移行を決定しました。発電所は、蝸牛山(かたつむりやま)に建設し、運営は3社が出資する小安地熱(株)が行い、運転開始は2027年3月を計画しています。
2021年に実施した噴出試験(生産能力評価のための実証試験)の結果、約1.5万kWの出力に相当する地熱流体(蒸気と熱水)の安定した生産が長期的に可能となる見込みであり、発電した電気は再生可能エネルギーのFIT(固格買取)制度の認定を受けます。また、かたつむり山発電所は、環境や景観にも配慮した設計を行うことで地域に貢献する発電所の建設・運営にも取り組んでいきます。
地熱発電は、太陽光発電などの再生可能エネルギーとは異なり、天候に左右されずに安定的な電力供給が可能なエネルギーとして近年ますます期待が高まっています。当社は今後も積極的に再生可能エネルギーの普及・拡大を推進し、日本のエネルギー・セキュリティと低炭素社会の実現へ貢献していきたいと考えています。
当社はオーストラリアにおける事業基盤を活用し、採掘跡地をさまざまな再生可能エネルギーの拠点として活用する検討を進めています。2022年に終掘する、オーストラリアのマッセルブルック石炭鉱山の採掘跡地を利用した揚水発電プロジェクトの事業化検証を同国の電力会社AGLエナジー社と共同で開始しました。
オーストラリアは風況・日照等気候条件が良好で国土が広く、再生可能エネルギーの可能性に富むことからオーストラリア政府も脱炭素化に向けたエネルギー転換を推進しています。
特に揚水発電によるエネルギー貯蔵は電力系統安定化に寄与し、再生可能エネルギーへのトランジションに必要不可欠な調整役となることが期待されています。今後もオーストラリアのエネルギー転換に積極的に対応していくとともに、低炭素・脱炭素事業の創出に取り組んでいきます。
再生可能エネルギー発電と同様に、当社グループはより低炭素なエネルギー供給を目指すうえでバイオマス燃料への取り組みを進めています。具体的には、石炭火力発電所において、石炭と混焼することでCO2排出削減が可能なバイオマス燃料であるブラックペレットの開発に取り組んでいます。ブラックペレットとは、木材を粉砕・乾燥して焙煎処理し半炭化したもので、従来のホワイトペレットに比べて耐水性・粉砕性などに優れ、石炭と同様に取り扱うことができます。そのため、既存設備を改造せずに石炭の使用量を減らし、再生可能エネルギー(ブラックペレット)の使用を増やすことができます。2021年には徳山事業所に続き、千葉事業所でもボイラで石炭との混焼試験を実施しました。現在、2022年商業生産の開始に向け準備を進めています。(ブラックペレット商品名:「出光グリーンエナジーペレット」)2030年に200万トンの出光グリーンエナジーペレット供給を目指し、ベトナム、マレーシア、インドネシア、タイなど東南アジアを中心に製造拠点拡大を進めていく予定です。
当社およびソーラーフロンティア(株)は、日産自動車(株)と共に、独自のダイナミックプライシング※1を活用したEV充電サービスの実証事業に取り組んでいます。
3社は、EV※2やPHV※3などの電動車の普及がさらに進む将来に向け、電力負荷の低減や平準化を目的として本実証に取り組みます。本実証で再生可能エネルギーを効果的にEV充電に活用することや、電力需要が高まる時間を避けた充電を可能にする仕組みを検証し、カーボンニュートラルの達成と持続可能な電力インフラの実現に貢献することを目指します。
当社は、一般社団法人 日本経済団体連合会(以下、経団連)が日本政府と連携し、気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」が長期的なゴールと位置付ける「脱炭素社会」の実現に向け、企業・団体がチャレンジするイノベーションのアクションを、国内外に力強く発信し、後押ししていく新たなイニシアティブに参加しています。
経済産業省、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が日本CCS調査(株)に委託して北海道苫小牧市で実施している「CCS実証試験事業」に協力してきました。CCSとは、発電所などから出る排気ガスに含まれるCO2を大気に放出する前に回収し、地中深くに圧入して封じ込める技術です。当社は2016年4月から実証試験事業で使用するCO2を含むガスを北海道製油所から供給するなどの協力をしてきました。2019年11月22日に当初目標としていた累計CO2圧入量30万tを達成しました。現在は圧入を停止し、漏えいなどのモニタリングを行っている状況です。
経済産業省が設置した「カーボンリサイクル技術ロードマップ検討会」に参画しました。当検討会は、カーボンリサイクルの技術開発を効果的かつ迅速に進めていくことを目的に設置されました。なお、2019年6月にロードマップが取りまとめられました。
NEDOの助成により次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合(AHEAD)が進めている、世界に先駆けた国際間の水素サプライチェーン実証事業に協力しています。燃焼時にCO2を排出しない水素の大規模発電分野での活用の実現に貢献するものです。この事業は、ブルネイ・ダルサラーム国から輸送される液体(メチルシクロヘキサン)から、当社グループの東亜石油(株)京浜製油所敷地内にAHEADが新たに建設した実証プラントによって水素を分離し、2020年から京浜製油所内で使用する計画です。東亜石油の火力発電設備の燃料用途などに使用するもので、東亜石油敷地内でのAHEADによる脱水素プラントの建設への協力に加え、実証運転面(人員派遣、用役供給、水素使用など)で協力を行っており、実際に2020年4月から京浜製油所内で水素の使用が開始されています。
水素の利用推進に取り組む民間企業10社にて、中部圏における水素の需要拡大と安定的な利用のためのサプライチェーンの構築を目指し、水素の大規模利用の可能性を検討する協議会を立ち上げました。水素の導入ポテンシャル、コストなどのフィジビリティ・スタディを実施しています。