水リスクについては、グループ全社のリスクマネジメント体制において、事業を取り巻く外部環境の変化によるリスクや自然災害・事故などによるリスク、気候変動・環境規制に関するリスクの一部として管理されています。環境においては「環境保全の方針」の下で汚染防止、資源の有効利用、生物多様性の維持などの観点から国や自治体の定める基準を下回るよう目標を定め排水処理を行うことなどを環境マネジメントシステムに組み入れて実践しています。
特に水資源利用については地球規模での把握に努め、世界資源研究所(WRI)AQUEDUCT情報を参考に、事業拠点の水ストレス地域の確認を行っています。国内に拠点を置く6つの製油所・事業所は、水ストレス高地域ではありませんが、グループ全体に占める取水量比率は99%となっています。このように水の取り扱いのほとんどが国内であることから、まずは水質管理を徹底するとともに、国内における資源の効率的な利用目的から、水資源の循環利用を通じて水使用量の削減を行っています。
当社は、日本以外の必ずしも水資源が潤沢ではない国や地域においても、事業を展開しています。世界における水資源の問題は深刻化しており、20億人以上の人類が安全な飲み水を得ることができない状況にあるといわれています。このような現状を認識し、海外に目を向けた取り組みも開始しました。
現時点では、水ストレス高地域での事業展開はないものの、水という貴重な資源を最大限有効活用するため、最大使用地域である日本において、使用量低減の取り組みを進めています。
製油所・事業所は当社グループの事業活動の中でも大量の水を使用する拠点であるため、排水基準を守るだけではなく製油所・事業所における水使用量削減に取り組んでいます。製油所では石油精製の過程で、プロセス流体の冷却用に一定量の水(海水・淡水)が必要です。冷却用に使用した淡水(温水)は、空冷式の冷却器に循環させ冷却することにより、再度、プロセス流体の冷却水として使用することで、環境への負荷低減に努めています。水を使用する事業者として、これからもより一層の水資源のリサイクルに努めていきます。
単位 | 2021年度 | |
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工業用水 取水量 | 千t | 82,208 |
リサイクル率 | % | 92 |
愛知事業所では、コンビナート内連携による冷水の融通による水使用量の削減を行っています。これは、石油コンビナート高度統合運営技術研究組合(RING)の支援を受けた取り組みであり、隣接する知多エル・エヌ・ジー(株)のLNG気化器から排出される冷水をプロセス冷却水として有効活用することで、知多地区全体での取水量の削減に貢献しています。
水資源の利用に関しては、リサイクル等を通じた使用量の削減とともに、使用した水を環境に戻す際の水質の管理も重要です。
当社各事業所においては、排水の水質管理には、使用後の排水をいくつもの設備での処理を施し、環境に悪影響をおよぼさないレベルまで水質を上げて、自然環境に戻しています。このような不断の取り組みの結果、環境異常の定義に基づく、2022年度の排水の水質管理に関する法令違反件数は1件(含油排水の海上流出:含油排水が大雨によりマンホールからオーバーフローし雨水排水ラインへ混入し海上へ流出)でした。