出光興産株式会社
上席執行役員
(2022年12月31日時点)
大嶋 誠司
2022年5月に公表した当社子会社における製品試験の不適切行為により、お客さまや関係者の皆さまの信頼を損なう事態を招きましたことを、改めて深くお詫び申し上げます。本件に関しては、自社の調査に加え外部専門家を加えた特別調査委員会の調査により、原因究明・再発防止策の策定を行い、現在その徹底に取り組んでおります。またグループ全体での品質に関する従業員への意識啓蒙を行っています。コンプライアンスの意識醸成の前提となる職場風土・環境づくりについても、よりオープンでフラットな職場づくりに重点を置き、アンケートや通報窓口の受信内容を活用して職場課題を洗い出しています。さらに、その課題に対応したコンプライアンス研修の実施により、従業員のコン プライアンスに関する当事者意識を高めてまいります。
当社のリスクマネジメント強化の取り組みとしましては、顕在化 している事業リスクに対するマネジメントシステムの実効性を強化しています。加えて、経済安全保障やサイバーセキュリティ、人権問題等の非連続な環境変化を念頭に、潜在リスクに対応して全社横断でタスクフォースを形成し、情報収集・潜在リスクの分析・対策の立案・実行をスピーディーに行う体制を構築しました。特にエネルギーセキュリティに大きな影響を及ぼす経済安全保障については、専門シンクタンクとも連携し、最新の情報を入手しながら、当社の中長期の事業シナリオにも反映してまいります。
当社グループにおけるコンプライアンスとは、「法令遵守」「社内規程・契約の遵守」はもちろんのこと、法令には違反しない場合でも、倫理的、社会的に許されない行為を行わないこと、つまり高い倫理観の下、謙虚な態度で自らを律し、誠実に行動することを意味します。
全世界で働く従業員を対象に、一人ひとりが持つべきコンプライアンスマインドの浸透と、それに基づいた行動の実践のため、コンプライアンスの順守とはどのような行動を指すかを、より具体的に、かつシンプルに分かりやすく示すものとして、「コンプライアンス行動規範」を制定しています。
行動指針に掲げられた「高潔」にのっとり、海外・国内を包含する全世界で働く従業員を対象として、具体的なコンプライアンス行動規範として以下の項目について定めています。またコンプライアンスに係る具体的な行動基準については、コンプライアンスブックにまとめており、定期的に有効性を審査し、改定を行っています。
当社グループはリスク経営委員会の下、業務執行、およびリスクマネジメントの課題を、より実務的、かつ専門的な見地で審議を行うことを目的に「リスク・コンプライアンス委員会」を設置し、コンプライアンス懸念事例への対応や、コンプライアンス推進活動計画、活動状況のモニタリングなどを行っています。定期委員会は四半期に一度、開催しています。
毎年5月の取締役会にて、前年度のリスク・コンプライアンス事業を報告し、前年度の振り返りとそれを踏まえた当年度の内部統制の基本方針を決議しています。
当社グループの部門長および関係会社の社長は責任者として、コンプライアンス推進担当役職者を任命し、責任を持って自部門・自社のコンプライアンスを推進しています。
社内規程「危機発生時の対応規程」に基づく部門などからの報告、各種相談窓口への通報をコンプライアンス懸念事例とし、リスク・コンプライアンス委員会が対応策支援や調査の指示・要請、再発防止策などの対応を行っています。
2022年度の重大なコンプライアンス違反件数 | 2件 |
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国内、海外共にコンプライアンス相談窓口で受け付けた事案は、全てリスク・コンプライアンス委員会へ報告されます。
リスク・コンプライアンス委員会は相談者の秘密保護と不利益防止を大前提に、必要に応じて調査担当者を指名し、事実関係の調査を行ったうえで対応策、処分案を検討します。また、相談者へのフィードバックを行うとともに、コンプライアンス推進体制にのっとり、再発防止の取り組みを行っています。
主にコンプライアンス、ハラスメントの相談を受け付ける社内窓口をそれぞれ設置しています。また、第三者が受付窓口となる社外窓口も設置しており、産業カウンセラーの資格を持つ相談員による電話対応も可能です。
各相談窓口は、社内ポータルサイトに掲載するとともにポスターでも掲示し、その存在が誰でも分かるようになっています。なお、相談内容の秘密厳守はもちろん、通報・相談したことによる相談者への不利益な取り扱いの禁止についても規程類で定め、相談者の保護を図っています。
海外事業所からの通報に対応する「出光グローバルホットライン(IGHL)」を設置しています。中国、アジア・オセアニア、中東、ヨーロッパ、ロシア、北米、南米の約40拠点を対象とし、海外事業所のほぼ全てをカバーしており、現地法人所在国の全ての言語に対応しています。
国内 /海外 社内 /社外 |
窓口名称 | 受付 | 対象者 | 相談事例の 対象範囲 |
相談方法 |
2022 年度 受付 件数 |
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国内 /社内 |
コンプライアンス相談窓口 | 総務部 | 当社および当社関係会社などの役員、従業員(アルバイト・パートタイマー、嘱託社員、出向者および派遣社員を含む)、および退職後1年以内の退職者 | 不正、不祥事、その他コンプライアンス全般 | 原則、実名相談 メール、書簡 |
22件 |
ハラスメント 相談窓口 |
人事部 | セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、その他ハラスメント全般 | 原則、実名相談 メール、書簡 |
22件 | ||
国内 /社外 |
社外第三者窓口 「職場のヘルプライン」 |
第三者 (産業カウンセラー) |
コンプライアンス全般、ハラスメント全般 | 匿名相談可 メール、電話 |
6件 | |
海外 /社内 |
出光グローバルホットライン(IGHL) | 総務部 | 当社グループの海外事業所の従業員(ナショナルスタッフ、当社からの出向者を含む) | 不正行為、ハラスメント、労働安全・安全環境・品質保証に関する違法行為、人権問題 | メール | 7件 |
コンプライアンス行動規範にのっとって、グループ従業員一人ひとりが高い倫理観の下、誠実・公平に行動するよう、継続的な教育・研修などを実施しています。
腐敗や利益相反行為の防止、インサイダー取引の禁止など、コンプライアンスに係る具体的な行動基準を記したコンプライアンスブックを2020年に発刊しました。定期的に改訂し、グループ従業員全員が、具体的な行動の規範を確認する道具として活用しています。なお、コンプライアンスブックは日本語版だけでなく、英語版も発刊し、国内外のグループ従業員への周知徹底に努めています。
「コンプライアンスeラーニング」を、年1回、定期的に実施しています。2022年11月には、職場におけるパワハラと相互理解、改正公益通報者保護法と内部通報制度の知識習得を目的として、当社および国内関係会社58社の従業員を対象に実施し、18,418名が受講(受講率100%)しました。また、新入社員や新任役職者向け研修なども実施しています。
社内ポータルサイトに、コンプライアンス意識向上を図ることを目的とした「コンプライアンスの部屋」ページを設け、違反事例や4コマ漫画を掲載し、最新の社外違反事例を紹介し、グループ内に広く発信しています。
2022年6月より、ポスターによる啓発を実施し、製油所、事業所、研究所、関係会社に配布しています。また本社では、デジタルサイネージでの掲示をし、情報周知を図っています。
当社グループでは、コンプライアンス行動規範において、国内外のあらゆる形式の腐敗を防止する旨を定めています。さらに、贈収賄防止について順守すべき基本的な事項と必要な体制を定め、OECD条約、FCPA(Foreign Corrupt Practices Act)、不正競争防止およびその他贈収賄を禁止する各国法令への違反を未然に防ぐことを目的に、「贈収賄防止規程」を定め、運用しています。腐敗防止は特に海外拠点におけるコンプライアンスの重要課題と位置付けており、具体的な予防措置の重要性を啓発します。また、コンプライアンスブックにおいて、贈収賄の禁止(公務員への贈賄の禁止)、贈答・接待の 制限について掲載し、従業員への啓発をしています。
2022年度の腐敗・贈収賄の発生件数 | 0件 |
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2022年度の腐敗・贈収賄に関する従業員の懲戒等の処分件数 | 0件 |
私たちは、国内・国外を問わず、公務員またはそれに準じる者に対して、不正に金品等の経済的利益を供与する、申し出る、約束する行為は行いません。政治家および行政とは、健全かつ透明な関係を保ちます。不当な金銭要求には、確固たる姿勢で臨みます。
当社グループは「独占禁止法遵守規程」にて、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、各国競争法およびその他関連法令に関して順守するべき基本的な事項と必要な体制を定めています。代表取締役社長は、本規程の適切な運用と禁止行為の未然防止を図るための統括責任を負い、当社の部門長および関係会社の社長は事業内容・組織体制・各国情勢・独占禁止法などのリスクなどを慎重に考慮し、本規程を具体化する適切な自己管理の措置などを講じています。