Strategies for Business Structure Reforms

事業構造改革に向けた戦略

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出光興産, 株式会社ディ・エフ・エフ

燃料油/基礎化学品

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出光興産株式会社
取締役常務執行役員

澤 正彦

2023年1月

役員メッセージ

国内の石油需要は減少し続けており、2030年の石油需要は2022年度比で約2割減少する見通しです。このような急激な環境変化を見据えて、当社はグループ全体の精製能力を適切に見直すとともに各製油所・事業所の競争力強化(コスト削減・効率化)を推進してまいります。競争力のある製油所・事業所の生産体制を維持することで、今後も重要なエネルギー・素材である石油製品・石油化学製品を安定供給してまいります。

同時に2050年のカーボンニュートラルに向けて、全国各地の製油所・事業所を「CNXセンター」化する事業変革を実行してまいります。水素、アンモニア、ケミカルリサイクル、バイオマス、合成燃料、CO₂固定化等のさまざまなメニューの中から、各地域、製油所・事業所の特徴・強みを生かすカーボンニュートラル施策に取り組みます。各メニューの中から選んだ施策を先行のモデル製油所・事業所で実装化し、その結果を各所に横展開を図ることで、迅速に「CNX センター」化への事業変革を進めていく予定です。

当社グループの製油所・事業所は、長年にわたって地域の皆さまと共に歩んできた歴史があり、そこで働く従業員やパートナーの皆さまの知識、経験、技術力は高く、将来の「CNXセンター」においても十分活用できる貴重な財産と理解しています。また、既存インフラの多くが活用できるため、競争力のある「CNXセンター」への変革を迅速に進めていけると考えています。

当社は、各製油所・事業所の従業員・設備・パートナー、地域の皆さまとのつながりという大切な財産を生かし、石油製品・石油化学製品の安定供給を継続しながら「CNXセンター」化を着実かつ迅速に進めていきます。それにより、足元から将来にわたって地域の皆さまの移動・エネルギー・暮らしを支えてまいります。

「CNXセンター」化構想イメージ
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  • ※Co‐Processing
「CNXセンター」化構想

当社が掲げる「CNXセンター」化構想は、エネルギー製造拠点として長年操業してきた製油所・事業所を、カーボンニュートラル実現のための拠点に生まれ変わらせることです。

当社グループの製油所・事業所の従業員は、安全操業のノウハウを持ち、危険物取り扱いのプロフェッショナルとして、長年、地域と共に歩んできました。製油所・事業所にある広大な敷地、大型船が着桟できる桟橋、タンク群などのユーティリティは、バイオ燃料基地、水素・アンモニアの製造・貯蔵基地、使用済みプラスチックのリサイクル等、「CNXセンター」として生まれ変わるポテンシャルを有しています。さらに、リチウム電池材料の製造基地、太陽光パネルのリサイクル基地としての活用も見込まれます。「CNXセンター」化は、各コンビナートの特色と需要に応じて実現していきます。

それぞれの製油所・事業所の強みを再認識するとともに、新たな強みを再構築しながら、コンビナート全体での「CNXセンター」化を進めます。当社は国内4つのエリアにて、エネルギー・素材の安定供給に努めるとともに、お客さまの要望にお応えする適正な製品を供給するために品質保証の取り組みを推進しています。

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北海道地区(北海道製油所)

北海道製油所は、日本最北端の製油所です。北海道をはじめ北日本の各地では、石油製品の中でも暖房用の灯油や輸送用の軽油を多く必要とします。また北海道エリアは再生可能エネルギー電力が豊富です。再生可能エネルギーを利用して産出される水素はグリーン水素となります。このグリーン水素を活用し合成燃料製造に取り組んでいきます。

関東地区(千葉事業所・京浜製油所)

千葉事業所は京葉コンビナート内に位置し、首都圏を中心とした旺盛な需要に応える出光グループ最大規模の事業所です。燃料油と石油化学製品に加え、高機能材料の製造などを行っています。近隣には発電所、製鉄所があり、そこでの水素需要に応える水素サプライチェーンを構築します。併せて燃料油と石油化学製品との間でシフト可能な製造体制という強みを生かし、使用済みプラスチックリサイクル、SAF・バイオケミカルの製造に取り組みます。

中部地区(愛知事業所・四日市製油所)

愛知事業所は、中部圏やその周辺の地域にエネルギーを供給しています。近隣には複数の発電所があり、そこでの水素需要に応える水素サプライチェーンを構築します。2022年10月1日に北浜地区・南浜地区の二拠点を有する愛知事業所となり、燃料油、石油化学製品のインテグレーションに取り組んでいます。

中国地区(徳山事業所・山口製油所)

徳山事業所は石油化学製品の生産および周南コンビナートへの原料供給を行っています。2022年8月に当社、東ソー(株)、(株)トクヤマ、日本ゼオン(株)の4社にて周南コンビナートアンモニア供給拠点整備基本検討事業を開始しました。2030年までに周南コンビナートで年間100万t 超のカーボンフリーアンモニア供給体制を確立することを目的としています。また周南市木質バイオマス材利活用推進協議会に参画し、低炭素なエネルギー供給を目指し、徳山事業所において旧製油所跡地を利用したバイオマス発電所の建設を終え、運転を開始しています。

出光興産, 株式会社ディ・エフ・エフ

燃料油

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出光興産株式会社
上席執行役員

森下 健一

2023年1月

役員メッセージ

2050年カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向けて、「3つの事業領域」の社会実装を通じて、事業ポートフォリオの転換を推進してまいります。なかでも、既存燃料油事業においては、特にスマートよろずやの推進とエネルギートランジションの確立が大きなテーマとなっております。

スマートよろずやの社会実装に向けて、当社の重要なパートナーである特約販売店と協働で取り組み、「apollostation」を「地域の生活支援基地」へと進化させてまいります。具体的には、バイオ燃料の供給や、EV充電の拡充、モビリティコンテンツの展開など「エネルギー」と「モビリティ」の両輪で、まちのニーズに応えるサービスを展開し、お客さまとの接点を高度化してまいります。

既に具体化されているSAFの供給については、製品導入、自社製造から供給拡大と国内生産体制の構築を実現します。

内燃機燃料ではバイオ燃料の取り扱いを開始し、今後の調達、製造から供給体制の確立に至るまでのサプライチェーン構築に取り組みます。特に陸上輸送燃料、および船舶燃料は今後も堅調な需要が想定され、エネルギートランジションを実現させることで、人びとの暮らしと地球環境を守る責任を果たします。

「apollostation」と「スマートよろずや」

apollostationは日本国内約6,200カ所で主に自動車の燃料油・潤滑油などを全国のお客さまに販売している拠点です。このエネルギー供給拠点の運営を担い、地域社会の課題やニーズをよく知る特約販売店とのネットワークが当社の最大の「資産」です。このネットワークを形成するapollostationは「それぞれのまちの人と豊かなくらしをサポートする」生活支援基地へ進化していきます。また、2050年のCN・循環型社会においても、「エネルギー」と「移動」は重要な生活の基盤です。

当社は特約販売店と共に、それぞれのまちのニーズに即して人びとの生活を支援し、将来にわたってお客さまに支持され続ける拠点へと進化していきますが、それを具体化した姿が「スマートよろずや(YOROZU)」です。YOROZUには「無限・多様性」という意味があります。apollostationを「エネルギー」と「移動」を主に、それぞれのまちのニーズに即してYOROZUに(無限に多様に)進化し、「エネルギー」、「モビリティ」を通じて地域の暮らしを支える生活支援基地というコンセプトに再整理しました。

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「エネルギーよろずや」は、CN・循環型社会対応に資する環境対応ecoステーション、分散型エネルギー供給ステーション、EV充電・メンテナンスステーション等を揃え、ガソリン車、EVといった多様な移動体などの動力となる石油、バイオ燃料、電気、水素、合成燃料、分散型エネルギー等の多様なエネルギーの供給責任を果していきます。

「モビリティよろずや」は、超小型EV、ドローンをはじめとするさまざまなモビリティラインナップの展開を通じ、移動に関する潜在的ニーズに応えていきます。また移動体の開発・提供だけでなく、新たなサブスクリプションやカーシェアモデルの展開、MaaSに関するサービスの開発を進めていきます。

apollostationの進化の一例
❶ 環境対応ecoステーション
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景観保護+国産材振興+サーキュラー拠点
❷ 分散型エネルギー供給ステーション
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地産地消エネルギーシステム
❸ トラック・物流向けステーション
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ディーゼル+バイオ燃料+水素
❹ EV充電・メンテナンスステーション
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EV車の安心
❺ MaaSステーション
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近距離の移動
❻ コミュニティサポートステーション
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地域のコミュニティ
燃料油の低炭素化

エネルギートランジションの実現に向けて、まずは当社が有している財産(顧客・人財・店舗・システム・インフラ・設備等)を着実に生かし、次世代ビジネスに向けた新規投資と併せ、お客さまに多様なエネルギーを安定的に供給できる体制を作り上げます。

バイオマス燃料分野では、最先端技術を用いたSAF製造設備(生産量10万kL)を千葉事業所内に建設し、2026年の供給開始を予定しており、航空輸送業界の低炭素ソリューションとして貢献を目指しています。なお同取り組みはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金事業※1に採択されています。

2030年にはSAF※2を国内で年間50万kL生産する体制構築を中間目標としています。この体制構築の中では原料調達とバイオ化学への展開を連動するとともに、内燃機油であるバイオディーゼルの供給をお客さまに開始していきます。

  • ※1 NEDOグリーンイノベーション基金事業
    特設ウェブサイトはこちら

  • ※2 SAF:Sustainable Aviation Fuel
    原材料の生産・収集から燃焼までの過程で、CO₂の排出量が少ない持続可能な供給源から製造されるジェット燃料。
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  • ※3 ATJ:Alcohol To Jet
    エタノールからSAFを製造する技術・プロセスで、SAFの国際規格「ASTM D7566 Annex5」として認証されている。
  • ※4 HEFA:Hydroprocessed Esters and Fatty Acids
    使用済み食用油や植物油などを水素化処理するSAF製造方法。
出光興産, 株式会社ディ・エフ・エフ

高機能材

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出光興産株式会社
先進マテリアルカンパニー
プレジデント

中本 肇

2023年1月

プレジデントメッセージ

当社の高機能材事業は、石油精製から一貫する製造販売と研究開発の体制が強みです。これまで培ってきた石油化学誘導品やエンジニアリングプラスチック、潤滑油、高機能アスファルト等の技術とノウハウを生かし、有機EL材料をはじめとした幅広い事業を展開しています。しかしながら、世界的に加速するカーボンニュートラル・電動化の流れに加え、今般の新型コロナウイルスの感染拡大など、我々を取り巻く事業環境はこれまでにないほど急激にかつ大きく変化しています。

これらの環境変化に対応して、カーボンニュートラル(CN)・循環型社会の実現に貢献するために、高機能材事業の技術力を融合・深化させ、技術の力で社会実装するソリューション事業へ転換していくことが課題と考えています。この実現のために、先進マテリアル領域においては事業全体を俯瞰した戦略立案・運営に転換していく必要があると考え、2022年7月に先進マテリアルカンパニーを設立しました。

足元の事業については、選択と集中を行うとともに効率化を図ることで、着実に収益を上げられる筋肉質な体質に強化していきます。加えて、事業ポートフォリオの変革に向け、新たに「電化・電動化」、「バイオ・ライフ」、「ICT」の3つの注力分野を設定しました。新たな注力分野には重点的にリソースを配分し、有機・無機合成、生物変換、光・電気化学等の多様な技術をMI (マテリアルズインフォマティクス)・AI /計算科学などのデジタル技術を組み合わせて融合を図るとともに、外部との連携をこれまで以上に活発化させることにより、出光のものづくりを発展させてCN・循環型社会の実現に貢献していきます。

  • ※AIを用いた材料開発技術の活用のこと
高機能材事業の成長における3つの注力分野
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  • ※ICT:Information and Communication Technology
    情報通信技術
先進マテリアルカンパニー

先進マテリアルカンパニーは、全体戦略立案などの経営企画機能を持つ技術戦略部のほか、各種の素材を扱う4つの事業部、農薬・機能性飼料事業を行う(株)エス・ディー・エス バイオテック、合成樹脂加工製品を取り扱う出光ユニテック(株)等の関係会社で構成されています。

コーポレート研究を担う次世代技術研究所および知的財産部を含め、カンパニー全体での事業戦略・R&D戦略策定・実行ができる協働体制を構築しています。また、グループ全体のCNXを担うCNX戦略室、プロセス技術を担当する生産技術センターと連携することで、技術を通じて2030年、2050年の当社ビジョン実現を目指します。

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2050年に向けた高機能材事業ポートフォリオ
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イノベーション創出に向けて

エネルギーや素材領域におけるイノベーション創出に向けて、これまでさまざまな取り組みをしてきましたが、各研究技術分野でこれまで以上に融合を図るとともに、MI/DX推進を全社活動として活発化し、研究開発の効率を向上させていきます。さらに、ベンチャーキャピタルやスタートアップ企業との連携拡大、大学との共同取り組みの強化等、オープンイノベーションを推進することで、3つの注力分野における新規事業創出を加速させます。

出光興産, 株式会社ディ・エフ・エフ

電力・再生可能エネルギー

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出光興産株式会社
常務執行役員

小林 総一

2023年1月

役員メッセージ

エネルギーは、SDGs7番の「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に示されている通り、人々の生活基盤の向上のみではなく、地球環境との両立を果たさなくてはいけない時代になっています。当社は、こうした社会的要請に応えるべく、脱炭素電源の開発と既存火力電源の低炭素化・カーボンニュートラル(CN)化を進めていくとともに、不安定になりやすいグリーン電力(再生可能エネルギー)を安定化させるため、蓄電池による制御にも取り組んでまいります。また、CN/RE100※1を目指す自治体、企業さまへのグリーン電力の提供やオンサイト、オフサイトPPA※2などさまざまな分散型電源パッケージの提案をしてまいります。具体例のひとつとして、本年よりCN実現のための再生可能エネルギー電源からEV活用までをワンストップで提案・提供する「idemitsu CN支援サービス」を開始しています。

また、FIT(固定価格買取)制度が開始され、各地に太陽光パネルの敷設が進み、現在の再生可能エネルギーの大宗は太陽光発電となっています。一方で、2030年頃からは使用済み太陽光パネルの廃棄問題の顕在化が予想されます。当社グループは、太陽光パネル供給事業者として、廃棄パネルの処理と持続的な太陽光発電ができるようリパワリング※3とリサイクルの事業化を進めてまいります。社会的責任として循環型社会へも貢献してまいります。

  • ※1 CN/RE100:事業運営に必要な電気を100%再生可能エネルギーで賄うことを目標とする国際イニシアチブ
  • ※2 PPA:Power Purchase Agreement(電力販売契約)の略
  • ※3 リパワリング:劣化設備の入替えや追加モジュール等により出力増強を行うこと
再生可能エネルギー電源拡大と分散型エネルギーの展開
分散型エネルギー事業の展開に向けた取り組み

2050年CN実現に向け、企業・自治体において脱炭素化に向けた具体的な戦略策定・施策実行が急がれています。国内では、非効率火力発電所の廃止や休止とともに、再生可能エネルギーの主力電源化が進む見通しです。一方、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは天候等の状況で発電量が左右されるため、電力の需給調整力の確保が課題です。

当社は発電事業者として再生可能エネルギー電源の保有を進めるとともに、蓄電池の活用等を通じ、電力の安定供給に努めています。

また、これまで培ってきた太陽光発電システム・EV・蓄電池・バーチャルパワープラント(VPP)などの知見や強みを生かし、2022年8月より自治体・企業の電力CN化やEV導入をサポートする「idemitsu CN支援サービス」の提供を開始しました。本サービスは、EVリース・自家消費型太陽光発電システム・V2H(Vehicle to Home:充放電設備)・エネルギーマネジメントシステム(EMS)・車両予約システムの導入をワンストップで提案・提供するものです。

「idemitsu CN支援サービス」の概念図
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これにより① EV導入のための煩雑なプロセスの改善、② ゼロカーボンドライブを実現するためのEV用の再生可能エネルギー電源確保、③ V2Hなどの付帯機器の選定・設置工事、④ EV運用時の充電による電力の基本料金上昇リスク低減などの課題解決に貢献します。また「動く蓄電池」としての価値を持つEVをEMS・車両予約システムと組み合わせることで、エネルギー利用の効率化・最適化や電力料金の削減、停電時の給電(災害レジリエンス強化)を実現します。

将来的には、再生可能エネルギー発電所、住宅や施設に設置された太陽光発電などの小規模エネルギーリソース、蓄電池等をEMSにより複数統合していくことにより、それぞれのまちにおける、エネルギーの地産地消、災害時のレジリエンス向上に資する分散型エネルギー事業の展開を目指しています。

エネルギーマネジメントシステム(EMS)の概念図
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ソーラーパネルリサイクルとリパワリングの事業化
ソーラーフロンティア事業構造改革

脱炭素社会の実現に向け、自家消費市場は拡大してゆくと見られ、当社はソーラー事業における事業構造改革を推進します。具体的には、EPC※1機能の内製化、強化を進め、発電所の設置工事に加え、O&M※2、リパワリング※3、パネルリサイクルなど太陽光発電のライフサイクル全体を通したソリューション提供を行っていきます。

  • ※1 発電所設備の設計・施工「Engineering Procurement Construction」
  • ※2 運用管理と保守点検「Operation & Maintenance」
  • ※3 劣化設備の入替えや追加モジュール等により出力増強を行うこと
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  • 更なる設置場所の拡大につながる、機器・システム・工法の開発と施工
  • 発電所のメンテナンスや設備の更新(リパワリング含む)
  • 蓄積されたデータや分析・解析能力を生かした発電所評価
  • 電気の「創る・使う・貯める」を最適化するエネルギーマネジメント
  • 廃棄パネルのリサイクル処理
ソーラーパネルリサイクル

使用済み太陽光パネルは、2030年代から急激に増加することが予想されており、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の推計によると、排出量のピークを迎える2035~2037年頃には、年間排出量が約17万~28万tになると試算されています。こうした背景から、当社グループのソーラーフロンティア(株)では太陽光発電の健全な普及拡大の推進策として、低コストかつ環境負荷の低いリサイクル技術の確立が重要であると捉え、2010年より継続的に、太陽光パネルのリサイクル技術開発を進めてきました。

2020年には、NEDOが実施する「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の長期安定電源化技術開発」事業において、ソーラーフロンティアの提案する「結晶シリコンおよびCIS太陽電池モジュールの低環境負荷マテリアルリサイクル技術実証」が共同研究事業として採択されました。

具体的には、2020年度から2023年度までの4年間で、CIS薄膜太陽電池に加えて、結晶シリコン系太陽電池のリサイクル技術開発にも取り組み、分離処理コストを太陽電池の種類を問わず3円/W以下とすることを目指しています。また、マテリアルリサイクル率90%以上を実現するために、分離した部材の用途開発に取り組んでいます。ソーラーフロンティアの国富事業所(宮崎県)に、市販サイズの太陽光パネルを処理する実証プラントを構築しており、2024年度の事業化を目指します。

ソーラーパネルのリサイクルフロー図
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出光興産, 株式会社ディ・エフ・エフ

資源

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出光興産株式会社
取締役副社長執行役員

平野 敦彦

2023年1月

役員メッセージ

当社は長きにわたり、多様なエネルギーを社会に対して安定的に供給することを使命として事業を行ってまいりました。この事業を通して培われたエネルギーのエンドユーザーである顧客の皆さまとの信頼関係こそが、当社にとっての最大の「強み」であり「価値」です。この貴重な「強み」と「価値」をプラットフォームとして、当社は社会・顧客の皆さまと共に、2050年のカーボンニュートラル社会実現のために必要とされる新しい技術やソリューションの社会実装を積極的に行ってまいります。その中で、特に既存の社会インフラ等を最大活用しながら着実にエネルギー・トランジションを推進するという点を重視していく所存です。

一例として、当面は発電エネルギーとして必要とされる石炭の環境負荷低減のための代替バイオマス燃料やアンモニアの製造~供給・販売までのサプライチェーンの構築が挙げられます。これらの取り組みはエネルギーのエンドユーザーの方々のニーズを深掘りできる立場にある当社でこそ可能であり、その背景として、この分野における当社の永年にわたる高い技術的知見があると自負しております。これまでの事業経験からの知見をエネルギー・トランジションの中で生かしていくという面では、石油・ガス・石炭の資源開発技術を生かした「CO₂回収・有効利用・貯留」(CCUS)やオーストラリアにおけるレアメタルや再生可能エネルギー等の取り組みもその一例です。当社の今後の取り組みにご期待ください。

海外ネットワークを生かした脱炭素への取り組み

日本はエネルギーの大部分を海外からの輸入に依存しており、カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向けても基本的な構造は変わらないと考えます。輸入するエネルギーが化石由来から非化石由来に切り替わっていく中で、それらの安定供給を担保することは極めて重要です。供給においては、海外のパートナーとの信頼関係を構築できていることが、大切な要素になります。

当社は環太平洋を中心とした20以上の国と地域に海外現地法人、事務所などの拠点があり、各地における行政も含めたパートナーとの間で、長年にわたるビジネスを通じて信頼関係を構築しています。それらを基盤として、各拠点の強みを生かし、石油製品トレーディング、電力事業、資源開発などに取り組んでいます。この海外ネットワークを活用し、CN実現に向けた製造、調達、販売の新たなバリューチェーン構築に取り組んでいます。

資源開発

当社は1960年代後半より石油探鉱を本格化し、70年代後半からは、石油代替エネルギーとして石炭、地熱などの多様なエネルギー開発・研究に取り組んできました。開発エリアは日本、欧州、東南アジア、オーストラリアなど国内外の各地にあり、それぞれネットワーク、知見を有しています。こうした技術、ネットワーク、知見をもとに、今後もガス田開発、地熱事業、CCUSへの取り組みを推進します。また、オーストラリアにおいては、石炭鉱山操業で培ってきた事業基盤を生かし、レアメタル鉱山事業および再生可能エネルギー事業への参入と知見獲得を推進しています。

石炭代替燃料への取り組み

石炭は資源賦存量や供給安定性の観点等から、重要なエネルギーであり、多くの需要家にボイラ/発電用燃料として利用されています。一方、他のエネルギーと比較してCO₂排出量が多いため、排出量削減の取り組みが強く求められています。

当社の石炭事業は1979年にスタートし、原料調達、輸送・貯蔵、販売の一貫したバリューチェーンを構築しています。また、民間企業で国内唯一の石炭専門の研究所を有し、石炭需要家の皆さまのさまざまなリクエストに応えてきました。近年では、ボイラでの石炭消費量の低減を可能とする、AI (人工知能)を活用した、ボイラ制御最適化システム「ULTY-V plus」を、日本郵船グループと共同で出資する郵船出光グリーンソリューションズ(株)が提供を始めました。これは既設の制御システムに追加設置することでDX技術によりボイラの最適運転を実現し、燃料使用量削減と同時にCO₂ 排出量の削減ができるものです。

CN社会の実現に向けては、さらに一段踏み込んだ石炭消費量の削減が必要であり、そのような需要家ニーズに応える形で、石炭代替燃料の開発やCO₂再資源化(カーボンリサイクル)に取り組んでいます。中期的には出光グリーンエナジーペレットの製造・供給体制の確立と、アンモニアサプライチェーンの構築に注力していきます。

  • ※出光グリーンエナジーペレット(当社のブラックペレット商品名)
    ブラックペレットは木材を粉砕・乾燥して焙煎処理し半炭化したもの。従来のホワイトペレットに比べて耐水性・粉砕性などに優れているバイオマス燃料で、石炭と同様に取り扱うことができ、石炭と混焼が可能。
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出光グリーンエナジーペレットの製造・供給体制の確立

石炭代替のバイオマス固形燃料である出光グリーンエナジーペレットの供給を開始し、拡大します。2022年度中にベトナムで12万t/年規模の商業製造プラントを完工予定で、以降は製造拠点を順次拡大し、2030年に300万t/年の供給体制構築を目指します。

生産量(計画)
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アンモニアサプライチェーンの構築

石炭代替燃料としてのアンモニアは、「燃焼時にCO₂を排出しない」という特性から、次世代エネルギーとして注目されています。当社もその重要性から2020年代後半に、アンモニアサプライチェーンの構築を目指します。

アンモニアはCO₂の低減に寄与する一方、毒性を有し、燃焼時に大気汚染の原因物質NOx(窒素酸化物)が発生するため、安全管理の専門知識・技術・設備が必要です。物理的性状は石油製品であるLPGと近く、石油関連施設をアンモニア用に転用できる部分が多くあり、既存資産の有効活用という観点で当社に優位性があると考えます。またアンモニアの供給元として想定される産油・産ガス国等と、ビジネスを通じて既に強固な信頼関係を構築していることも、当社の強みです。

2020年代後半のサプライチェーン構築に向け、ブルーアンモニア/カーボンフリーアンモニアを調達し、当社の製油所・事業所の装置・設備にて、研究開発・実証に取り組んでいきます。

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出光興産, 株式会社ディ・エフ・エフ